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【Das Resultat sagt alles ~zwolf~】


局ラジを拝聴しながら書いたので仕事行く前に投下してみる。

第12話です~。フェイト視点です。

=======


違う。

――……何度も、そう叫んだ。
確かめるように。言い聞かせるように。

縋るように。


怖いんだ、とてつもなく。怖いんだ。
持っていかれてしまう。

その声に。

君を。

私を。


私の、全てを。


-----【zwolf ~(Stimme)~】-------


珍しく天気のいい日だった。
春と呼ばれる割にはまだ少しだけ肌寒く、でも日差しは心地よかった。

『フェイト隊長、今のところは異常ありません』
『うん、わかった。ありがとう』

今日何度目になるかわからない通信を終え、ため息をひとつ吐く。

睨むように向けた視線の先には、妙にしんと静まり返った街並み。
もう夜も近くなるというのにその街並みを彩る光はまばらで、
ぽつぽつと寂しげな印象をかもしだしている。

それを見つめながら、もう焼け付くように繰り返し読み込んだ
書類の内容を思い出した。

私たちが住んでいる国の一つ隣。

……にも関わらずあまり交流もなく、今まで一度の外交すらなかった国。
その為にあまり情報がこちらに来ず、未だ不明なことが多い所だ。
人口は約3000人程と推測される。あまり大きくはない。

今日見てきた中では、確かに上の言うように不安要素はない、と断言できる。
騎士団などはそれなりにあるようだが、それも飾り程だ。
……そしてなにより訓練などをしているのも見受けられない。

まぁ、こんな外部の人間に見えるほど公にはしないだろうけれど、
それでもあまりに穏やかで、静かなところだった。

止めていた足を、ゆっくりと、進める。

海が近い為か、港には多くの漁船らしきものが停泊していて。
そのライトを受け、水辺は赤、青、黄とさまざまな色できらきらと輝いている。
少し離れたここからでは、それはまるで宝石のように綺麗に見えた。

ざらり、と少し砂を含んだ潮風に肌を撫でられて。
一瞬、視界の先が金色に染まる。慌てて髪の房を押さえ、後ろに流す。

――……視界の先には、特に異常は見られなかった。



朝方、重要機密として私の所に寄せられた任務は。
――……偵察。……そして、救出、というものだった。

先日まで偵察任務を行っていた隊。
帰城し、情報を持ち込んだのは、3人だった。
いくら小隊とはいえ、あまりに人数が少なすぎる。

――……そして、なによりいるべき隊長の姿がなかった。

不思議に思った指揮官が尋ねると、身を震わせた彼らは一言。

「……持って、いかれました」

それが、一体何を意味するのかはわからなかった。
ただうわごとの様に、彼らはそれのみを繰り返した。


……本当に戦渦が起こるとは思えない。
でも、それでよかった。戦争なんて、ないほうがいい。

『……こちらの方は特に異常はありません。穏やかすぎるくらいですね』

『うん、こっちも異常なし。このまま長時間いると危険だから。
  ――……一度帰城をして情報を整理したほうがいいかもしれないね』
『了解しました。』


ただ闇雲に動いて相手に正体を晒すより、一度持っている情報を整理したほうがいい。
そう考え、各配置に着いていた子達に帰城の令を出して。

私も帰ろうと身を翻した、その時だった。

背後に、なにかぞくり、とした気配を感じて振り返ると、
そこにはうっすらと頬に笑みを浮かべた、一人の女性が立っていた。

「……こんばんは」

なるべく笑顔で、そう声をかける。
格好は私服。思念通話は何重にもプロテクトをかけてあるから漏れることはないはず。
一応念のためハッキングなどの形跡を調べたがどこにも見当たらなかった。

なら、今彼女には私が一般の観光客にしか映っていないはず。
ここで慌てたりすれば逆に怪しまれるに違いない。

「こんばんは」

その女性も笑顔でそう答えた。
それに安心し、顔を覚えられないために足早にそこを立ち去ろうとして。

「くすくすくす。…あなたが、フェイト・テスタロッサ……ですよね?」

妙に楽しそうなその声に。言い得もしないような悪寒が走った。
背中をだらり、と、冷や汗が流れていく感覚。

心臓が激動を打ち込み、頭の中に氷の塊を投げ込まれた気がした。


「……どうして、私の名前を……!?」

声が、震える。……確かに、彼女は言った。
フェイト・テスタロッサと。

フェイト・T・ハラオウンではなく。
旧名の ”テスタロッサ”と。

「……どうしてでしょうね? くすくすくす」
「質問に答えて。……どうして知っているの? 場合によれば……」

ポケットに隠してあったデバイスに手をかけようとしたところで、
さらに、その笑い声は大きくなった。……なぜか、妙に頭に響くその声。

「くすくす。知っていますよ、もちろん。…見れば見るほどそっくりですね」
「……何を言っているの」

ずきんと、痛んだ。

「ねぇ、フェイトお嬢様。 いつまでそうしているつもりなんですか?」

ひどい吐き気が、する。

やめて。やめて!!

その声を聞くたびに、胸が押しつぶされそうな痛みに襲われる。
聞きたくない! だめだ、その先は。

「あの方が、お待ちしてますよ?」
「――……っ、」


頭が、割れそうに――……痛い。


「……誰、が……?」
「あらあら、もう。本当に忘れてるんですね」

だめだ、だめだ。
思い出すな、思い出すな!!


――……思い、出す?

私は何を言ってるんだろう?
なにを思い出すって言うんだろう?

私の全てはここにある。今、ここに。


「プレシア様を」

……すべ、てが。

「プレ、シア?」


呆然と言い放ったその言葉に。
――……身を焼くように。裂くように。

痛んだ。
心が、大きな音を立てて、軋む。


そんな私をあざ笑うかのように。


辺り一面に――……鐘の音が、大きく響き渡る。

「あらあら。もうこんな時間なんですね。……せっかちですね。
また近いうちお会いできることを楽しみにしていますね。フェイトお嬢様」

「待て!……っ、!!」


名前を聞いたその瞬間から、頭の痛みが止まない。

「……っ、どう、して」

頭の中で――……声が、止まない。

〔フェイト〕

――……”わたし”を呼ぶ、その声が。

***

「フェイト・T・ハラオウン。……ただ今戻りました」
「ご苦労だったな、フェイト」

切り刻まれるような痛みを持つ心を抱えながら城へと戻った。
……どう戻ったのか、それすら今はもうわからない。

ただ、あの声が止まない。

それをなんとか押さえつけ、上官であるクロノにあったことの報告を済ませていく。
……あの女性のことは、伝えなかった。

伝え、られなかった。

身体をじりじりと、炎が焼いていく。

声が、止まない。

わたしに、私が――…… ”持っていかれる”


「……ちょっと、姫様のご様子を見てまいります」

なぜか、なのはに会いたかった。
……どうしようもないほどに、会いたかった。

大丈夫だよって、抱きしめて欲しかった。
フェイトちゃん、て。名前を呼んで欲しかった。

あのはにかむような笑顔が、見たかった。

「……もう、姫様はご就寝されている」
「顔を、見に行くだけだから」

そう言って部屋を出ようとしたところで。

「……もうなのは姫のことは諦めろ、フェイト…。それが君のためだ」

そんな、小さな声が聞こえてくる。
――……その声に、かっと身体が熱くなった。

「私のためだなんて勝手に決め付けないで!!」

しん、と静まり返った室内で、慟哭が響き渡る。
目頭が、熱くなって。視界の先のクロノが滲んだ。

「フェイト、いいかげんにしないか! 自分の立場を考えろ!」

これ以上、踏み込むと痛い思いをするだけだ。そう続けられる。
――……わかってる。わかってる。

でも。

「立場って何? 身分って何!? 皆同じ人間なのに!
 一体何が違うの!! 何がだめなの! 何が正しいの? ……何が……何が……っ」

いつもなら耐えられるはずの不安が、急に圧し掛かってくる。

ああ。

君へのこの想いだけで、ずっと君の隣で生きていければいいのに。
貪欲に、一度は繋がったはずの絆を再び求めて。足掻いて。

「ただ……なのはが、好きなだけなのにっ」

足掻いて。――……離されていく。
手を伸ばしても。

結局はその手ごと、切られてしまうのだろうか。

〔フェイト〕

声が、止まない。

頭が、痛い。


思い出すな、思い出すな。

「……ごめん、クロノ。ちょっと疲れてるみたいだ。……もう、寝るね」

ばたん、とそのドアを閉めて。
部屋へと向かう長い長い廊下を、一人歩く。

――……敷かれた赤い絨毯が、流れ出た血のようだと思った。
真っ赤に染まる、真紅の。……まるで、私の瞳のような。

赤い、深い。
痛みを伴って存在する、その色。

「……お帰りなさい、フェイトちゃん」

その声に、意識がこちらへと戻された。俯けていた視線を上げると、
――……そこには、今会いたくてどうしょうもなかった彼女の姿。

私の部屋の前で。ドアに寄りかかって。
……夢じゃないかと、思った。私が作り出した幻影では、ないのかと。

その頬に、手を伸ばそうとしても。指先が震えて、それは叶わなかった。

「フェイトちゃん」

名前を、呼ばれる。
頭の中に響くものとはまるで真逆の温かい、声。

「……フェイトちゃん」

差し出されるその手をつかんで。
ぐっとその身体を引き寄せた。

腕の中にすっぽりと、私より頭半分だけ低いその身体を包み込む。
鼻腔が甘い香りにくすぐられて。胸が、ぎゅうっと締め付けられた。

「……泣かないで、フェイトちゃん」

その手に何度も髪を梳かれる。何度も、何度も。

「な……の、……は…」
「うん、ここにいるよ」

「なのは、なのは……なのはっ」

もう誰かに見られてしまうとか、そんなことも気遣えなくて。
ただその名前を呼んで、抱きしめた。

君への想いだけで、生きていければいいのに。

〔フェイト〕

思い、出すな。

どこか脳の片隅が、脅迫めいた悲鳴を上げる。

――……思い出すな。

あの声を、あの冷たい眼差しを。


思い出したら最後。

「フェイトちゃん」
「なの、は……っ」


なのはを、私を。

全てを。
なにもかもを。


”わたし” に、



――……持っていかれてしまうのだから。
-----------------
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No title

>32323さん

うあああ!
本当にありがとうございます!!

……こんなんばっかです、汐風の戯言 orz
本当にありがとうございました(つ□T)
WEB拍手
感想やリクエストなど頂けたら嬉しいですw  返信不要の方は頭に×をお願いします
プロフィール

汐薙

Author:汐薙
初めまして、汐薙と申します。
魔法少女リリカルなのはで活動中。

主な取り扱いカップリングは
フェイト×なのは
はやて×なのは です。

リンクフリーですので、貼るも剥がすもご自由にどうぞw
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