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【Das Resultat sagt alles ~neun~】

第9話。なのは視点です。



==========

もう…どうにもならないことだなんて、思いたくなかった。

だって、こんなにも好きなのに。
あんなにも好きでいてもらえたのに。

全てが、一瞬で――……切れた。

君の優しい笑顔も。温かな体温も。柔らかな声も。

「フェイト、ちゃんっ!」


全てが、切れた。

どうして。ただ好きで居たいだけなのに。
それさえも許されないのか、私は。

愛することも。愛されることも。

――……私は、できないのか。

なら、なんで私はこんなところにいるんだろう?
何のために居なきゃ、いけないんだろう?

望むことも、縋ることも許されないのなら。
ただ「私」という存在が欲しいのなら。

そこらへんにあるぬいぐるみに「姫」と付け置けばいいじゃないか。
私は「姫」になんてなりたくない。「なのは」でいたい。

わかってた、我侭だって。

でも――……私、は。

フェイトちゃんが好きでいてくれた、好きと言ってくれた
「なのは」として、フェイトちゃんのセカイに在りたい。


それも――……それでさえも、贅沢な望みですか?


-----【neun ~(Hitze)~】-------

もう、どれくらいこうやって立ち尽くしていたんだろう?

わからない。ただ吐き出された息が、眼前を白く染め上げていく。
それは多分きっと、意識すらもそうさせているに違いない。

だって、わからない。今目の前に起こっていることが。

ああ、――……違うよ。

本当は、わかってるくせに。
これが、一体何を意味しているのかを。

「…ど、して……」

震える手足。最早、それが寒さのせいだとかなんて。
――……今はもう。何にも考えられなかった。

そっとそのドア板を指でなぞる。

古い木の感触。外気に晒されたそれは思った以上に冷たく、
触れていた指の温度をどんどんと奪っていく。

――……次第に、指先がじんと痺れ出したのを感じた。

「……フェイト、ちゃん」

隊舎の4つ目の部屋。……ドキドキと高鳴る心臓を押さえつけ、
何度も訪れていたその部屋は。

「……そん…な、にっ、なの…は、のこと……」

今はもう、電気すらついておらず。しん、と静まり返っていて。
その持ち主がもうここにはいないことを、痛いくらいに主張していて。

ただ、彼女じゃない新しい主を探しているかのように。

「嫌い…に、な…ちゃっ、たのっ…かな…?」


『いらっしゃい、なのは。入って?寒かったでしょう?』


真っ黒く大きな口を空けて――……そこに在るだけだった。


「ぁ……ああ、……ああああああっ!」

――……それが。フェイトちゃんとのやりとりから2日経った夜のこと。


真っ暗な空に凛と大きく浮かんだ、真っ青なその月が
目に沁みるくらいに――……とても綺麗な、夜のこと。


フェイトちゃんのことは、すぐにはやてちゃんに聞いた。


でも答えは、自分の隊から外れたからどこに移ったか分からない、とだけ。

部隊の数は、もう数え切れないくらい沢山あることは知っていた。
部隊長クラスにならないと、名前が挙がらないことも知っていた。

隊の構成員を知っているのは、その部隊長とさらにその上直属の指揮官のみ。
揉め事を避ける為、他の部隊の事は干渉しないこと。それが暗黙のルール。

だから私も手伝えるのには限度があるんよ、そう……告げられた。

「それなら私が……っ」

「それはあかん、姫様自らなんて事が大きくなりすぎる。……そうなったら
 困るのは、なのはちゃんもやけど……フェイトちゃんもなんよ?」

――……ああ、どうして。


行き場の無い気持ちが、溢れて流れて留めていられなくて。

「……どう、して…っ!」

誰かのせいにしないと、おかしくなってしまいそうで。
でも、結局は誰も悪い人なんていなくて。

――……壊れそうだった。

***

あの夜から2年が経ち、私は15歳になった。
身長も大分伸びた。子供扱いもされなくなってきた。

月日は流れている。緩々と、確実に成長していく。

でも、気持ちだけは。
――……あの時のままだった。


そんな中、今日は初めて立ち会う、新しい部隊長の就任式。

普段は私は出なくてもいい式なのだけれど。今回はそうもいかなかった。
なんでも新しく私の護衛に入ってくれる人がいるらしい。

総指揮官長さん曰く、若いけれど実力はある一番の期待の星。
彼女に任せておけば、姫様も安心。

……そんな言葉。


「なのは姫、今日からこの者が護衛に入る騎士です」

その言葉に、俯けていた顔を上げる。

……うん……挨拶はきちんとしなきゃいけない……よね。
お世話になるんだから、こんな暗い顔してちゃ申し訳ない。

「……っ」

そうして顔上げたその先には。深い深い、紅が――……あった。

記憶の中にあるよりもずっとずっと大人びたその表情と。
私よりも頭一つ分高いその背と。長い長い、金色の髪。

「……ふぇ、と……ちゃ…?」

会いたくて、たまらなくて。
ずっと探していた、想っていた彼女の姿。

やっと、会えた。
夢じゃないんだよね…?本物なんだよね?

「……フェイトちゃ…っ!」
「遅ればせながら……お会いできて光栄です」

嬉しさを隠そうとせず、彼女の名前を呼ぼうとした次の瞬間聞こえてきたのは。
私のその声に被せるかのように発せられた、無感情な……ひどく冷たい声と。

「初めてお目にかかります、姫様。フェイト・T・ハラオウン。
 本日より姫様付きの近衛兵となりました……どうか、宜しくお願い致します。」

……冷たい、笑顔。

「フェイト……ちゃん、だよ……ね?」

いつも凛とした光を放っていたその瞳は……今はもう、見る影もなかった。
私の名前を呼んでくれた優しい声も。はにかむようなあの優しい笑顔も。

「はい、そうです」


――……もう、どこにもなかった。


「生活面では引き続き八神部隊長が。私は主に移動時などの護衛を担当
させて頂きます。困ったことがありましたら何なりとお申し付け下さい」

「……フェイトちゃん、私だよ?……なのは…だよ?」

その冷たい全てが、彼女のものだと信じたくなくて。
喉の奥に張り付いてしまった舌を何とか引き剥がし、言葉を乗せる。

……嘘だって言って欲しかった。演技だよって。
いつものように微笑んで欲しかった。

なのに。

「ええ。存じております。なのは姫様……噂の通りです、お美しい方だと」
「……っ!」

ああ……。やだよ……
そんなのは聞きたくない。聞きたくない!

その口調が、態度が、言葉が。

まるで、お城の中に居る人たちの…それみたいだった。

「……ど、して…っ!」


どうして、どうして。
確かに会いたかった。会って目を見て話し合いたいと思った。

だけど。

こんな――……こんな、ことを望んでいたんじゃ、ないのに。


「ふぇいと、ちゃん……っ」

そのまま私は彼女の袖をぎゅっと握り締めて。
そんな私を見て、彼女はただ無表情で。


――……溢れた涙が、止まらなかった。


***

それから2ヶ月が経った。

フェイトちゃんは、ずっと傍に居てくれた。
――……「なのは姫」の傍に。「フェイト隊長」として。
冷静沈着で腕が立つ、そんな……絵に描いたような立派な騎士として。


「……っ。ふ……っ、」

嫌だった。彼女の口から姫と呼ばれることが嫌だった。
ただ耳を塞げばいいのに、それも出来ない。

だって、彼女の声だから。
冷たくても。なんの感情がなくとも。


大好きな、フェイトちゃんの声だから。


「……っ、く……ぁ…あっ」

――……ああ、だめだ。もう寝なきゃいけないのに。

明日だって早い。朝から稽古詰めだ。寝なきゃ。
ここ最近だって、ずっと寝れてない。倒れたら、きっと困らせる。

そう思うたびに、彼女の冷たい表情が思い浮かばれて。
――……よりいっそう、目が冴えてしまう。

視線を向けたカーテンの隙間からは、相変わらず切断された朧な月。
見つめた先の輪郭はじわじわと滲み、真っ暗な空へと色も無く溶けていく。

カーテンから漏れ出た光の帯も、ベッドに届く寸前に床へと縫い止められて。
私の周りには……ただ、真っ暗な闇だけが辺りを深く染め上げていた。

真っ暗だ。ああ、でもいつもの光景でしかない。
籠の中で啼くことも、もう疲れた。翼はもう――……無い。

今籠を開けられたとしても、きっと向かうのは谷の底だ。
どんなに手を伸ばしても、空には届かない。月にも届かない。

……もう、なんか……いい、かな……。

眠れなくてもいい、とにかく目を瞑ろう。そう思って。
ゆっくりと瞼を下ろし、シーツの海に体を漂わせる。

すると泣き疲れた体は意外なほど貪欲に睡魔を呼び込んで。
思ったよりも早くに緩々と意識がかすんでいくのを感じた。

そうして眠りの淵に落ちるその寸前に――……かたんと、音がした。
頭の端でそれを聞く。……続いて、ぎいとドアの開く音。

この部屋の鍵を持っているのははやてちゃんだけだから彼女かも知れない。
――……でも、こんな夜更けにどうしたんだろう?

不思議に思ったけれど、身を覆うその気だるさに勝てず体を起こすことも
儘ならなかった。せめて声だけでも掛けよう。

――……そう口を開きかけたその瞬間に、


「……起きていらっしゃいますか?」

あの子の声が、聞こえた気がした。
ああ、でも違う。あの子はこんなに優しい声はしていない。

ううん――……違う。してたよ、ずっと。
私が、させなくなったんだ。

優しいあの子の心を、傷つけたから。

いつも優しかったのに。大好きだったのに。


「……寝てますか?」

その声に……ぎゅうって、胸が苦しくなった。
お願い。もう、フェイト隊長の冷たい声なんか聞きたくないの。
私の中の、フェイトちゃんの声が消えちゃうの。


だから、帰って。……お願い。

思わず涙が零れ落ちた。


暫しの沈黙の後――……ぎし、と床が軋む音がして。
すぐ傍に、人の気配を感じた。

「もう……寝てる、よね……」

確かめるように、息を呑んだのが分かる。
その声の後に、ふとなにか頬に温かい感触を感じた。

「……泣いて……るの?」

戸惑うようなその声は、確かに彼女の声だった。
ここ最近のものとは違う、私が大好きな


「……淋しいの…?」


[フェイトちゃん]の、声だった。

そっと這わされたその指が目元に触れて。
ゆっくりと、溢れた涙が掬い取られたのがわかった。

「……ごめんね。……ごめん」

ゆっくりと何度も頬へ指で触れられる。
泣き腫れて熱を持ったそこに、彼女の冷たい指が、心地よかった。

「……傍にいるよ。」

細い指が、震えている。きっと、その優しい紅も。


「……そばにいるよ。……どんな形でも、ずっと」

冷たい指の代わりに、ぱたぱたと温かい雨に打たれる。
頬を伝って、首筋を伝って。零れたそれが、シーツへと消えていく。

「……っ…」

――……どうして、フェイトちゃんが泣いてるの?
だって、冷たくしてたの、フェイトちゃんなのに。

なんでそんなこと、言うの?


彼女の温かい息が、頬にかかる。

「……なの……、」

最後まで呼ばれることの無かった名前と。
唇の端に一瞬だけ触れた、彼女の唇。

温かい涙と、優しい声。

どんな顔をしていたかは――……わからないけれど。
でも、彼女の全てが優しかった。

ねぇ、フェイトちゃん。

今も。


「なのは」はフェイトちゃんのセカイにいますか?
-------------

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フェイト隊長の挨拶のところが普通に水樹さんがあているように聞こえるのはなぜだろう。 

>mayuさん

シーンが脳内アニメーションで再生して頂けた、ということですよね?
そう言って頂けると凄く光栄です!w 本当にありがとうございますw

いまおもったら、『あている』じゃなくて『あてている』だ・・・^^;

初めましてFateと申します。
私はなのは→フェイトっぽく見えるなのフェイが大好きなのでこの話は一番面白いと思いました。冷たくしているフェイトを演じている水樹奈々さんと悲しんでいるなのはを演じている田村ゆかりさんが簡単に頭に浮かんできます。

長々とすみません。またこのような話を作っていただけると嬉しいです。

>Fate さん

遅くなってしまいましたが、嬉しいコメントを本当にありがとうございます。
そう言って頂けると凄く光栄ですwww

また1本考えている長編ものがあったりなかったりするので、
もし機会がございましたらまたお目通り頂けたら嬉しい限りですwww

本当にありがとうございました!

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汐薙

Author:汐薙
初めまして、汐薙と申します。
魔法少女リリカルなのはで活動中。

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