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【Das Resultat sagt alles ~zwei~】

第2話です~。なのは視点になります。





==========

物心ついたころから私は、ここにいた。

この国の王さまの娘として。
この国の――……姫として。

それが嫌だったわけじゃない。

生んでくれて、育ててくれたお父さんやお母さんも。
一緒に育った、優しいお兄ちゃんやお姉ちゃんも。
いつも何かとお世話になっているお城の人たちも。

みんなみんな、凄く大好き。

……でも、いつからなんだろう。


――……ここは籠だ、と思ったのは。

部屋にある備え付けの窓は、防犯のためにと鉄の格子がつけられ
何も遮るものがない空を見たことは……過去に数える位にしかなかった。

街へ自由に出ることも出来ない。
……必ず、誰かといっしょ。

もう、お父さんは心配性だなぁ、大丈夫だよ~。なんて微笑みながらも
……ああ、私は一人で出かけることも出来ないのかと……ひどく切なかった。

場内に仲のいい人たちは沢山いたけれど、みんなわたしよりも年上。
そしてなにより……私を「姫」としてしか、見てくれなかった。


――……「なのは姫」の傍には居てくれるけど
「なのは」の隣には、たった一人を除いては……誰も居てはくれなかった。

そしてその一人は部隊も忙しいせいか、あまり私用で会うことが出来ない。


淋しかった。悲しかった。
私はただの「姫」でしかなかった。「なのは」ではなかった。

……「なのは」と言う人間は。


ここには……居場所が、なかった。


-----【zwei ~(kennen lernen)~】-------


「……う~。どうしよう……」

すっかり日も暮れ、辺りを闇に染めた街の中でため息を一つ。
誰もいない隙を狙って場内を抜け出して、逃げるように街へと飛び出したのが
多分今から2時間くらい前のこと。

初めて一人で出れたことになんだかとてもどきどきして。
高鳴る胸を押さえつけるように、平然を装ってレンガ張りの道路を闊歩して。

初めは嬉しくて……でも、少しして気づいてしまったのだ。

街のあちこちに貼ってある……そのポスターを。

毎年毎年行われるそのパーティーは、名目は確かに私の誕生日。


……でも、そのパーティーで家族と一緒にいたことは……一度も無かった。

ご機嫌を取ろうとするのが見え見えな、軍の偉い人たちや貴族の人たち。
そして隣国から招かれた王様や王子さんたち。

そしてそれに一つ一つ受け答えをする私。
……それが、毎年お決まりの光景。


こんな風に祝って欲しいなんて私は、一度だって思ったことなかった。

家族5人で食卓にならんで、いつもより少しだけ豪勢な料理を囲って。
小さくてもいい、可愛いケーキがテーブルの真ん中にちょこんと置かれる。
そのことにはしゃいだ私を窘めるようするお父さんに、笑いで誤魔化して謝って。

そして定番のバースデーソングを皆で歌って、ローソクの火を吹き消す。
その後に美味しいね、なんて微笑みながらみんなでそのケーキを食べていく。

……そんなささやかだけど、温かいパーティーをしたかった。

なのに、私にはそれすらも許されない。
許されるのは、作り笑いしか出来ない……冷たいパーティーだけ。

ふいにじんわりと浮かび上がった涙を、ぐっと手で拭って。
そのポスターから逃げるようにその場を立ち去り、
なるべく目立たないように、細々とした道を歩いた。


……でも、それがいけなかった。

馴れない道に入り込んでしまい、すっかり場所が分からなくなってしまったのだ。
……これはちょっとまずいかも知れない。

そう思って元来た道を帰ろうとしても、元々は敵が城へとすぐに
入り込めないように作った道なだけあって、それも分からなくなっていた。

縋るように見上げた視界に入り込むのは、群を抜けてそびえ立つ、大きなお城。

……私はその籠から逃げ出すことなんて許されないんだ、
落ちて行く夕日に染められたお城にそう言われているような気がして

それが――……悔しかった。


そうしてしばらくすると、もう辺りは真っ暗になってしまっていた。
どうしようもならなくなり、見つけた街灯の下でしゃがみ込む。

……これからどうしようかな……
そう困ったようにため息を吐いた自分が情けなくなる。
ああ……どうしようもないなって。

そんな気持ちを誤魔化そうと歪んだ顔を膝に埋めた……その時だった。


「どうしてこんなところで一人でいるのかな?」

――……凄く優しい声が、した。
その声に導かれるように顔を上げると――……眼前に深い紅い瞳が映り込む。

「……えっと、ちょっと迷っちゃって……」

素直にそう答えると、どこから来たの?と、家のことを聞かれた。
だけど、お城から抜け出しました!やったね!なんて素直に言えるはずも無く、
どう答えればいいのか分からずに首を横に振ると、困ったようにその子は唸って。

……もしかしたらこのまま置いていかれちゃうかな……って。
そうしたら、どうしよう……って急に……凄く不安になって。

自分でも無意識のうちに、その子の服をぎゅっと握ってしまっていた。

するとそれに気づいたその子は、ややあって手をこちらへ差し伸べてくれた。
……握ったその手は、今まで私が触れたことが無いような、とても暖かいもの。

どうやら、彼女は私のことをまったく知らないようで。
だから――……


……それは、初めて「なのは」に差し伸べられた温もりだった。

***

「えっと、ここだよ。……ただいま、リニス」

そう言って持っていた紙袋をテーブルに下ろした彼女は、キッチンへ立っていた
女性へと声をかけた。その声にゆっくりとこちらへと来てくれたリニスと
呼ばれたその女性は、なんだかとても優しい雰囲気を纏った綺麗な女の人だった。

「おかえりなさい、フェイト。……あら、そちらの子は?」

濡れていた手をエプロンで拭きながら、ふとこちらへと視線が送られる。
あら?と何かに気づいたようで――……自然と身体が堅くなったのを感じる。

……もしかしてバレてしまったのだろうか……

背中に、つう……と汗が流れたのを感じた。
心臓が痛いくらいに、うるさい。

「……うん、迷子なんだって。リニス、電話借りてもいいかな?」

その子のその言葉に、向けられていた視線が外されて。
ええ、どうぞ、と電話機の前へと案内される。

……どうしよう。どうしよう。
夜はお付きの人たちがいないからばれていないとは思けど、
今ここで電話をしたらすぐにばれてしまう。

……きっとお父さんにも街に出ていたことが伝わってしまうだろう。
そうしたら……今日みたいに簡単に街へ出ることが出来なくなってしまう。

困ってしまってどうしようもなくなっていると、後ろから大丈夫?と
優しい声が聞こえてきた。その声に、うん、と答えて。

――……瞬間、ふいに、ある人物の顔が思い浮かんだ。
護衛部隊員で私のお世話役……というかよく遊んでくれる子。

……あの子ならきっと……

直通の電話番号を遠い昔の記憶を搾り出し、震える指で思い出した番号を押す。
プルルルル……プルルルル……。何度か呼び出し音が鳴って。
3回目のコールで少しだけ眠そうな、でも聞き覚えのある声がした。

「はい、もしもし?どちらさまですか??」
「あ、私です。なのはです。……実は……」

事情を話すと、ため息交じりの苦笑が聞こえてきた。
電話している私を見守るように見ていたその子に聞いた現在の住所を伝えると、
少しばかり小言を貰った後、明日朝に迎えにいく、と言って貰うことができた。

そのことに安心して受話器を置いて。

「あの……もしよかったら、でいいんですが……」

そういいかけると、奥で食事の用意をしていたリニスさんから、
いいですよ、とすぐに返事が貰える。

なんだか急なことで凄く申し訳なくなって。
ごめんなさい、そう言うと、全然いいんですよ、と笑って返される。

「うん、そうするといいよ。……もう遅いし、女の子一人じゃ危ないから」

後ろにいたその子も、そう言ってにこやかに微笑んでくれた。


***

「あの……今日は本当にごめんね……」

食事も終わって、もう寝る時間。
壁に掛けられていた時計を見上げると、もう10時になるところだった。

「ううん、気にしなくていいよ。ちょうど通りかかってよかった」

分からない道で一人じゃ怖かったよね?……そう微笑まれて。
――……その笑顔に、なんだか妙に心臓が熱くなるのを感じた。

……どうしちゃったんだろう……いっぱい歩いて疲れちゃったからかな?


頭の片隅でぼんやりとそんなことを考えていると、そうだ、と
何か思い出したような声が聞こえて。

「……そういえばまだ君の名前、聞いてなかったね」
「……あ、そういえば……」

食事中もたくさん色々と話させて貰ったけれど、
そういえば一度も名前を聞いてなかった気がする。
「あう……ごめんね」と謝ると、照れたように「こちらこそ」と返されて。

「わたしは、なのは。……あなたのお名前は?」
「フェイト……。フェイト・テスタロッサ……」

こんな生まれだけど、名前だけはちゃんと分かってたんだ。
両親の置き形見みたい。そう笑って、着けていたペンダントを見せてくれた。
そこに着いていた古い印象を受けるコインを裏返すと、何かで刻まれたように
少しだけかすれた「フェイト・テスタロッサ」という文字が伺える。

そのことになんと言っていいのか分からずに黙り込んでしまうと、
あ、ごめんね、と言われて。その言葉に首を何度も横に振る。

「でも、久しぶりかな。こんなに話したのは。この施設に同じ年の子、いなくて」
「……うん。私も同い年の子と話したことって全然なかったから、嬉しいな」

はにかむようなその笑みに、自然と私も頬が緩む。
こんなに……心の底から笑ったのなんて、本当に久しぶりかもしれない。
なんだか変にドキドキして、そのせいか頬に熱が灯るのを感じる。

「フェイトちゃん。……あのね…もしよかったら」
「うん?な、……なにかな?」

勇気を振り絞って。大きく息を吸い込んで。
想いを――……言葉に、託す。

「友達になろう?……フェイトちゃん」

声は震えてないだろうか?変に思われてないだろうか?
そう思って、汗で濡れてしまった手のひらを隠す様にぎゅっと握り締める。

「とも、だち……?」

きょとん、とした表情のフェイトちゃん。
……もしかしたら私なんかじゃ友達になってくれないかもしれない……
こんな、大きな隠し事をしている私なんか……
そう思ってぎゅっと再度拳を握り締める。

するとややあって、私でよければ……と、少しだけ震える声が帰ってきて。

……それが嬉しくて……思わず涙が零れた。


「うん!あのね、私のこと…なのはって呼んでくれないかな?」
「なの、……は」

初めて、家族以外に呼ばれる……私の名前。
初めて、「本当の私」だけに向けられた……暖かい瞳。

それがどうしようもないくらいに嬉しくて……。
それと同時に、なんだか胸の奥に暖かいものが広がっていく。

「うんっ!」

そのまま私達は何度も名前を呼び合って、微笑みあって。
私は生まれて初めて、幸せに包まれながら


緩やかに訪れた眠りの淵へ落ちていった――……

***

「じゃあ、なのは……」
「……うん」

朝が来て、もうそろそろお迎えがくるから……お別れの、時間。
それが淋しくてぎゅっと手を握ると、ぎゅうっとその手を握り返される。

「……フェイトちゃん、また……会いに来てもいい?」
「うん、なのはさえよければ、いつでも……」

繋がれた手が、まるで固まってしまったかのように動かせなくて。
視線を、その深く優しい紅い瞳から外すことができない。

……離れたく、ない。

――……不思議と、そんなことを強く思った。
なんでだろう……こんなことは今まで一度もなかったのに。
せっかくできた友達だからなんだろうか……。凄く、悲しい。

「……なのは、きっとお家の人……待ってるよ」
「……うん」

離そうと手に力を加えると、ぎちり、と指が音を立てて
……ゆっくりと、一本一本の指が外されていく。

「また、絶対に来るから」
「……うん。待ってるよ」

ひんやりとしたドアノブをひねって、ドアを大きく開く。
またね、そう手を振って。静かに……そのドアを、閉めた。

そうして少しだけ沈んだ気分のまま何歩か足を踏み出すと、
通りの何本か先の角に、見慣れた後姿。

「……えっと、その……ごめんね……」
「ホンマやで~。……誤魔化すこっちの身にもなってな?なのはちゃん」

――……苦笑まじりにそう言われて。
まったく、ウチのお姫さまはやんちゃであかん、と頭を何度か撫でられる。
それは嬉しかったんだけど……やっぱりフェイトちゃんとは何か違う感じがした。

「……ま、可愛いなのはちゃんのためやし……。潔く諦めるか~」
「ご迷惑おかけします;」

ぺこりと頭を下げると、また撫でられて。
そのまま手を引かれ、馬車へと乗せられた。

「……ねぇ、はやてちゃん」
「うん?どないしたの?」


あの、照れたようなはにかむ笑顔を思い出して。
あの、凄く暖かい手のひらの温度を思い出して。

「私ね、お友達が出来たんだよ」

今はもう離れてしまったその温度に。
……胸の奥が、きゅうっと苦しくなった。


――……もう一度会いたいなって……。



どうしようもない程に――……ただ、それだけを思った。
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Author:汐薙
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