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久々に。


前に書いた素行の悪いフェイトさんの続きです。全体的に酷い感じになりましたorz

本当にすみません;



彼女に出会った当時、自分で言うのも変な話だけれど、私はどうしようもない人間だった。
口先一つで寂しさを共有した女性を籠絡し、他人の体温で夜の空白を埋め、浮草のように人と人との間を流れ渡った。
中にはそれでもいいと分かっている子もいたけれど、それでも随分と色々な人を泣かせてきたように思う。
申し訳ないとは思うけれど、それだけ。この子だけを愛そうとは思うことができなかった。
自分は恋愛に対してクールすぎる方だと考えていた。実際、私の周りでも私に対するイメージはそうだったろう。
どうしようもなく軽い人間。自分だってそう思っていたから。
だから初めて彼女に逢って、いつの間にか臆病になってしまっている自分に気づいたとき、とても驚いた。

それが恋とはわからずに、ゲームを楽しむ感覚で、彼女を手に入れることだけに心血を注いでいた。
面倒なことは嫌だ。振り向かないなら次に行けばいい。そう思っていたのに、いつまで経っても諦められないことに気付いて。
これは恋だ。知ってしまったどうにもならない感情に、過去を悔やんだのは、それから間もなくだった。

「好きだ。愛してる」

いつも通りの常套句。愛を告げる語彙は、私の中ではそれしかなかった。
言いすぎて効力の擦り切れてしまった言葉は、確かに心からのものなのに。
彼女には届かないと、思い知らされるばかりで。

「さようなら、フェイトちゃん」

卒業式の後。人ごみをかき分けながら彼女の元へ辿り着いた私に、彼女はやんわりとした笑顔で手を振った。
いつもの挨拶だった。もう会えないから寂しいとも、また逢おうねとも言わなかった。

「君が好きだよ」

いつもより強く告げた言葉に、あなたもそろそろ誰かに落ち着きなよと笑った。
こんなに可愛いんだからもったいないよ。なら、君が貰ってよ。それ、いろんな子に言ってるじゃない。

違うよ。確かに昔は言ったけど、違うんだ。今は本当なんだ。

最後に交わした言葉のキャッチボール。
返されることのなかった球は、静かに足元に転がった。


 ◇


彼女から「転勤が決まった」と連絡を貰ったのは、ほんの二か月前のことだった。
仕事柄、滅多に転勤はないと思っていたのだけれど、思えば三年以上経つのだから、何も不思議でもないんだろう。
今まで私は、連絡することすら怖かったのに。それなのに彼女はといえば、それはあっさりとメールを寄越してきた。
急に来たそれに、かえって私の方が戸惑った。

今更、どんな顔をして逢えばいんだろう。

散々悩んだ。それでも逢わないという選択肢は、多分元からなかった。
久しぶりに逢った彼女は、私が記憶していたよりもずっと大人っぽくなっていた。いや、元から大人だったんだからこんな言い方は変だけど。
それでも。
綺麗に纏め上げられた艶のある亜麻色の髪と、薄化粧。
隣を歩くにも緊張して、彼女の残り香が鼻腔をくすぐる度に私は少女のように情けなくドキドキした。

「なのは。綺麗になったね? これじゃあ生徒にもモテるでしょう?」
「あはは、どうかな。でも、ありがとう。フェイトちゃんも、相変わらず綺麗だね?」

ふとした違和感。

冗談交じりに告げられた声はやっぱり彼女のもので、けれど私が知っている彼女はこんなことは言わなかった。
カクテルグラスに寄せた唇。引かれたルージュの色に、胸がざわりと震えた。

見たくなくて。グラスについた口紅から、顔を反らした。


それから私たちは、予定が合えば一緒にお酒を飲むことが多くなった。
私が通っているバーに行くこともあったし、なのはがよく同僚と行くという居酒屋の時もあった。
私かなのはの部屋で飲むこともあった。それは2人きりだったりもしたけれど、大概はやてと3人が多かった。
意図的に2人きりにならないようにしているのだろうか。……いや、なのはは多分そんなこと気にしてない。
きっと、私が思っているだけだ。なのはもいい迷惑だろう。被害妄想にもほどがある。

持っていた籠に、目に着いた缶チューハイとサワーを入れていく。
ビールを何本か加えてレジに向かうと、レジ前の棚に懐かしいものを見つけた。
《コンビニ限定の復刻版です》ゴシック体で書かれたPOPの下に積み重ねられた袋。その一つを手に取る。
太陽に透かしたあの色と、舌先に甘さがよみがえってくる。それから、煙草の煙と、胸の痛み。
手に取ったのは、多分。なんとなくじゃなくて。

「すみません。これもください」

ずっしりと重さの増したビニール袋を提げて、街灯がぽつぽつ灯る路地を歩く。
コンビニから5分ほど歩くと、なのはが住んでいるマンションが見えてきた。
入口でオートロックを外してもらい中に入ると、私が下げた大きな袋を見てなのはは目を丸めた。

「重かったでしょう? もー、連絡くれたら迎えに行ったのに」
「このくらい大丈夫だよ」

通されたリビングは温かかった。なのはも帰ってきたばかりなのか、部屋着ではなくスーツだ。
用意されたクッションに座る。部屋を満たしたなのはの匂いに、そわそわした。
気を紛らわせたくて、袋から買ってきたばかりの缶をローテーブルに並べる。
軽いおつまみしかなかった机の上は、あっというまに沢山の缶で埋め尽くされた。

フェイトちゃん、調子乗りすぎ。
嗜められるような言葉に、頬を掻く。

「新商品だっていうから。つい……ね」
「うん、美味しそう。……でも、2人じゃ飲みきれないね。はやてちゃんも呼ぼうか?」

ケータイを掴んだ手を、やんわりと押さえる。
はやて、今日は残業だって。作り話に眉を下げる。

「それに、いいじゃない。たまには。なのはも明日はお休みでしょう?」

言葉の震えが、どうかなのはに伝わりませんように。
何とか落ち着き払ったように取り繕いながら、やんわり笑う。

はやてと3人で飲むのも楽しくて好きだけれど、今日はどうしても2人きりで飲みたかった。
なのはは何か考えていたようだったけれど、ややあって頷いた。

「そっか。たまにはいいかも知れないね?」
「うん。それじゃあ、乾杯しよっか。どれがいい?」

それぞれ好きなものを選ぶ。私はビールを。なのははサワーを。
前々から苦いものが苦手だと言っていたなのはは、やっぱり甘さの強い葡萄を選んだ。

プルタブを空けると、ぷしゅっと小気味よい音が部屋に響く。

よっぽど喉が渇いていたのか、なのはは勢いよく缶をあおぐ。流し込むと言ってもいい飲み方で。
大学の頃はそんな機会もなかったせいか、初めて見た時は内心びっくりした。
今は慣れてしまったけれど、なんとなく似合わないなぁ、とも思っていた。

おつまみのチーズを細く割いて、何本かまとめて口に運ぶ。
きゅ、と歯触りの悪い音が鳴って、ビールで流し込んだ。なのはの作ったサンドイッチがもっと食べたかった。

「それでね?」

自宅であるせいか彼女はいつもより饒舌だ。ずいぶんと早く缶を開けた。
本当にアルコールが入っているのかと疑うようなペースで、なんとなくジュースを飲んでいるみたいだった。
最後のチューハイを飲みきると、残りはビールしかなくなってしまっていた。

「ああ、甘いのなくなっちゃったね。……買ってこようか?」
「ううん、これでいいよ」
「……えっ」

それビールだよ。いい終わる前に、プルタブが開けられる。
ちょっと前だったら、ダメだって言ってたのに。今はさして嫌な顔もされなかった。

「なのは、ビール飲めるようになったの?」
「うん。最近ね」

そうなんだ。言いながら、やっぱり胸の奥はあの初めて飲みに行ったときみたいに、もやもやしていた。
3本目を飲むとようやく酔いが回ってきたのか、紅潮した頬で彼女は話を続けていた。
とろんとした蒼い瞳は、いつもの彼女らしくなくなんだか可愛らしかった。……職場の飲み会でもこうなんだろうか。
知らない誰かに、こんな表情を見せているんだろうか。

教え子の話。職場で仲のいい同僚の話。最近読んだ面白かった本。映画。
何気ない会話に頷きながらも、想像なんて何一つできなかった。みんなみんな、面白くなかった。
でも、そんなの、言えることじゃない。

湧き上がった苦い思いを、ビールで流し込む。

「……そういえば、懐かしいものを見つけたんだ」
「うん? なぁに?」

取り出した飴の袋に、なのはの頬が緩む。
ああ、それ懐かしいね。柔らかな声に、やっと私の知っているなのはを見つけた気がした。

「よく見つけられたね?」
「コンビニ限定の復刻版だって」
「そうなんだ? 昔よく舐めてたなぁ」
「うん、なのはいつも持ってたよね」

おかげで一時期、飴恐怖症になったよ。その言葉になのはの頬が膨らむ。

「むー。ひどいなぁ。フェイトちゃんだって、それで煙草、止められたでしょう?」
「まぁ、そうだね。煙草なんて吸う暇なかったしね?」

笑い合う。すぐ隣に座った肩が揺れた。長い髪の房が、肩から滑る。
手を伸ばせば届く距離で無防備に笑うなのはに、奥の方に燻っていた火が熱を増した。

苦しくて、切なくて。
たまらない。
おかしい。
こんなの。

酔いが回ってしまったんだろうか。
用意してきたはずの軽口なんて、何一つ出てこない。

逢わなくなって、3年。その間に何度も何度も繰り返してきた。
一夜の熱を籠絡するための常套句。絡め落とすためだけの愛の言葉。

好きだよ。愛してる。

告げることだけは簡単で。得ることだって簡単で。
だけど本当は。――本当に欲しかったのは。

「でもあの時は、なのはがこんなに酷い子だとは思わなかったよ」
「えー。私、酷いかなぁ」
「自覚、ないの?」

華奢な肩を、寄りかかった壁に押し付ける。
唇を塞いでしまえばもうこちらのペースに持ち込める自信があった。声高に言える経験だってあった。
だけど、どうしてもできなかった。

「……したいの?」

なのはの静かな声が、会話の断たれた部屋に響く。
酔っているはずなのに、それを全く感じさせない蒼い瞳。

「私は、したくない」
「うん。知ってる」


言われなくたって、知ってた。
なら、どうして私はこんなことをしたんだろう。
泣いてしまいそうで、押し付けた肩におでこを寄せた。
温かくて、柔らかくて。心が、震えた。

どうしても欲しくて。でも、ダメで。
それでも一緒に居たくて我慢して忘れようと思ってたけど、できなくて。

「……じゃあ、」

私が信用ないことなんて、昔からわかってる。そうさせてしまったのは私なんだ。
でも。もう戻ることが出来ないほど、私の心はなのはだけで構成されてしまっていた。
どうして君じゃなきゃだめなんだろう。わからない。

「じゃあ、抱いてよ。遊びでもいいから」

泣き出しそうになる喉を堪え、笑いの混じる軽口を告げる。
ただ細い息だけが返された。顔は上げられなかった。
きっとなのはは今、困った顔をしているんだろう。

「フェイトちゃんは、やっぱり何も変わってないんだね」
「……え、――んっ、」

耳元に触れた熱に、感じたこともないような痺れが背を走った。
舌だ。――認識すると同時に、喉が震えた。

「あ……っ、っふ、」

ぞくぞくと熱が湧き、耐えられなくてなのはに寄りかかった。
唇が首筋を這い、鎖骨に押し当てられる。
甘噛みするように歯が立てられ、思わず背中が跳ねた。
仰け反った腰を支えていた手のひらが隙間から差し入れられて、肌を撫でる。

「……ぁ、なの、はっ」

求めていたなのはの熱。ずっとずっと欲しかった、なのは。
溜らずに息を零すと、差して戸惑う様子もなく上着が脱がされた。
一つ一つボタンを外していく指先は淀みなく、どこか手馴れているような感じさえさせた。
その事実がまた、勝手に胸の奥を焼いた。

「肌、熱いね?」

一人で肌を晒した心もとなさに、やり場のなくなった不安と共に瞼を伏せる。
今まで私が触れてきた子はみんな、こんな想いをしてきたんだろうか。
だとしたら。それを当然のように享受してきた自分は、やっぱり酷い人間だった。

「……んぅ、好きな子に触れられてるんだから、っ……当然、だ、……よ」
「フェイトちゃん、いつもそんなこと言ってるの?」

違う。君にだけだ。言いたくても声にならなくて。
なのはは静かな瞳でこちらを見ていた。あの空で下で見たものと同じだった。告白された時の乙女らしいものではなかった。

「フェイトちゃん、可愛いね」

ねぇ、好きだよ。重ねられた言葉に首を振る。
聞きたくなかった。だって、私が今までいろんな子に言ってきたものと同じだって、分かったから。
悲しいのに。確かめる様に撫でられていく唇に、触れられた所から粟立っていく自分の肌が情けなかった。

「――あ、――っく」
「……ん、」

達する瞬間、抱きしめた背に爪を立てた。強く、強く。
このまま消えない痕になってしまえばいい。そう思った。
誰にも見せられなくなってしまえば、――。

「なのは、……好き」

愛してる。愛してる。
嘘じゃない、本当の言葉。
きっと伝わらないけど、それでも言わせてほしかった。

意識が途切れる瞬間、なのはの声が聞こえた気がした。












「愛してるよ」

優しい声だった。
だからこれはきっと幸せな夢を見ているんだって。
手放されていく意識の端で、思った。




















……続く、のだろう、か?

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プロフィール

汐薙

Author:汐薙
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魔法少女リリカルなのはで活動中。

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