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リリマジ15の告知です。



毎度のことながらギリギリになってしまい、本当にすみません。
明後日はリリマジー!とドキドキしているのですが、天候の話を聞いてからは違うドキドキに苛まれております。
明日の夜から明後日の午前中らしいですね。台風並みってどのくらいすごいんだろう……。
そんなに酷くならないといいな……。

会場にいらっしゃる予定の方は、どうか十分にご注意ください(><)


さて、それでは、最終的な告知のほうをさせて頂きたく思います。



汐風の戯言 「ま12」



>新刊
===========


【鳴かない仔猫】


リリマジ新刊


なのは→フェイト / 長編 /一般向け
A5版(オフセット)/ 64P 700円

[内容]
----------

理由あって期間限定の同棲生活を始めた二人。
治療と称してキスをするうちにフェイトのことを好きになってしまったなのはだけれど……。
なのは×フェイトの長編パラレルです。


サンプルは当記事の下にあります。
とらのあなさまでも委託をお願いしております → こちら


おまけのコピ本は作成の方が間に合いませんでした…… orz






>既刊
===========

【raison d'etre】

フェイト→←なのは / 長編 /一般向け
A5版(オフセット)/ 84P 900円
>リリマジ14刊行。

[内容]
----------
ある日、突然魔法が使えなくなってしまったなのは。
一人もがき苦しむなのはを支えようとするフェイト。けれどなのははそれを拒んで……。
そんな感じの両片思い風味な長編パラレルSSです。



【泡沫人‐うたかたびと‐】

はやて→なのは(→←フェイト) / 短編 /一般向け
A5版(オフセット)/ 32P 400円
>リリマジ13刊行。

[内容]
----------
フェイトに片想いをしているなのはと、なのはが好きだけど自分の想いを押し隠してそれを応援するはやて。
恋が終わってまた始まるまでの、はやての独白調の小説です。




【初恋がたり】

フェイト×なのは&なのは×フェイト / 短編/ 一般向け
A5版(オフセット)/84P 800円
>リリマジ12刊行

[内容]
----------
プロローグ+春夏秋冬のテーマで1本ずつ、計5本の短編集形式です。
晴れて恋人同士となって、絆を徐々に深めていく二人を学生生活を中心に書いてみました。
いつもよりは初々しめかな……と思われます。



【初恋がたり~後日談~】

フェイト×なのは&なのは×フェイト / 短編 / 成人向け
A5版(コピー本)/24P 200円
>リリマジ12刊行

[内容]
----------
機動六課に出向前の二人が、空いた時間を利用して温泉旅行に行く話。
初恋がたりの流れを汲んでいるので、一応はスピンオフ的な内容になるのかな、と。成人向けです。



【ただ、祈るように君を】

なのは、フェイト / 文庫版 /140P(透明しおり付) 1000円
>リリカルマジカル11刊行

[内容]
----------
探索任務の際、過労の重なったなのはは墜落事故にあい、意識不明の重体に陥ってしまう。
その直後、一体何が起こっていたのか。フェイトは何を思っていたのか。
なのは視点でお送りする、パラレル長編小説です。



【千の言葉を重ねるよりも、】

フェイト×なのは&なのは×フェイト / 短編集 /成人向け
A5 / 108P  800円
>リリマジ10刊行

[内容]
----------
ブログに載せていたSSを編集し直し、短編集として再録致しました!

[収録内容]

◇君色の空
◇千の言葉を重ねるよりも、
◇Please Look Only At Me Now.
◇君と二人だけの世界で
◇ビターチョコレート、溶かします
◇不安や寂しさなんて
◇ちょこれーときす
◇バンソウコウ
◇とある夏休みの一日
◇幸せなキスをしよう
◇てのひらにくちづけを
◇Cude sugar And a sweet kiss
◇幸せの温度
◇kiss me
◇雨の降る休日は、
◇雨のち快晴。ところにより笑顔
--------------
計16本




以上を小部数持込みさせて頂きます!
「ただ、祈るように君を」「初恋がたり~後日談~」は今回の持ち込み分のみの在庫になります。




冒頭にも書かせて頂きましたが、台風並みの悪天候になるとのこと……。
足場が悪くなることが予想されますので、本当にお気を付け下さい。
私も電車が止まらないことを祈るのみです; 前ノリなんだけど時間帯がちょうどやばい感じです……orz


そんなこんなですが、どうか当日は宜しくお願い致します。












※以下、新刊のサンプルになります。





恋とか、愛とか。――これは、そんな甘いものじゃない。
いつからだろう。私は自分の想いにそんな言い訳ばかり繰り返していた。
こんな風に言い聞かせなくったって、重ねてきた経験から嫌というほど理解している。けれどいつの間にか、そうしなければ上手く眠ることさえできなくなっていた。
漠然とした恐怖。
気を抜けば胸中を侵食する「何か」が怖かった。
平静を取り繕おうとしても、こうして彼女の前に立てば否がおうにも鼓動は激しさを増して。戸惑うばかりで。
どうすることも出来ず、先の見えない不安に翻弄される自分自身が本当に嫌だった。
一緒にいるはずなのに。彼女の心が分からない。
暗闇の中でばら撒かれた硝子片を探り出しているような、そんな安定感のなさだけが心を満たしていた。

「……は、」

空気を取り込むために開いた喉が、渇いてひりつく。
ずきずきと頭が痛む。息を吐くたびに、何万本もの針で刺されているみたいだ。
(ああ、そうだ)
疼痛に瞼を伏せると、高校受験の時を思い出した。これと似たものを、試験の翌日に患ったことがある。
精神と共に肉体も疲弊していたのか、四十度近い高熱が噴き出た。
全身が蕩けたような倦怠感に唸りを上げていると、普段は小言のない両親から「こんな無理をするならエスカレーターで大学まで行けばよかったのに」と、そう言われた。
あまり無理をするな。――厳しくも優しいあの言葉を、今の私にかけてくれるだろうか。
いや、考えるだけ無駄だ。尋ねられたところできっと、返す言葉は見つからない。
(だって。無理なんか、してないよ)
飲み込んだ空気は暖かかった。なのに、指先は氷のように冷たい。
細かく走る震えを、握った拳に閉じ込める。
爪が白くなるくらい布地を握りこんだ私に、彼女は愛おしそうに瞳を細めた。
張りつめたこの場に合わないような、優しい瞳だった。
(ああ――そうか)
それはまるで愛玩動物を愛でるような。
私が少し前まで彼女に向けていたような、それだ。

「なのは」

伸ばされた指先は、羽毛をなでる手つきで髪を梳いた。
頬にも触れたがっているようだったけれど、帯びた熱を知られたくなくて。俯く。
静寂の合間に、私なんかでは埋めることの出来ない茫漠とした時間が流れ続けていた。

「――、」

もう一度口を開いても、形にならない言葉は唇を割ることさえ出来ない。
ソファの座面に背を預けた彼女と、それに覆いかぶさる私。
行動に移したのは、私だった。
拙い会話を切って、決して優しくはない力で押し付けた。
自分がされたら混乱するし、怒ったかも知れない。
それくらい酷いことをしたのに、一番してはいけない後悔ばかりが胸を突いた。
考えなしの勢いに任せ、自分でもどうしようもなくなったら狼狽えるだけで。
普通なら文句の一つも言いたくなるはずなのに。それなのに、向けられた表情はいつもと変わらない涼しいものだった。
ねぇ、どうしてあなたは、そんな目をしていられるの?
どうしてそんな表情でいられるの?

「――ッ」

ぐるぐると。感情の暴風雨が、身体の中に渦を巻く。
この感情は正しくないとわかっている。なのにどうしても腹立たしかった。
何をするんだと罵って欲しかった。いつものような笑顔じゃない、ありのままの彼女を見たかった。
他でもない、私に。
(ひどい我儘だ)
わかっていた。でも、どこかでそうなればいいと期待があったんだ。
思い知らされたのは、結局私では、表情一つ崩せないということばかりで。

「……なのは」

 慰めを含んだような優しい声と。同じくらい優しい顔。
口を開く。けれど胸の中に溢れた想いは幾万とありすぎて、そのどれを伝えるべきなのかが分からなくて。
意味を持たないただの単語でしかない言葉が絡んで、舌が縺れた。
何かを吐きだした所でそれはただの戯言にしかならない。今は、特に。
“――フェイトちゃん”
親しげな声。呼ばれた彼女の名前は、私が今まで知らなかった痛みを伴った。
綺麗な笑顔。
初めてだった。笑顔はいつも見ていたのに、これは一体誰なんだろうって思った。全くの別人だった。
ああ、そうだ。私は、目の前のこの子のことを、何も知らないんだ。
教えられた名前を呼んでいるだけで、例えばそれが偽名だとしても私にはわからない。
私が知っているつもりだけのフェイトちゃんは、本当はいないのかも知れない。

「なのは?」

 目を焼く光は、蛍光灯ではなく、彼女の髪の色だった。
細い金糸の髪は一点の穢れもなく輝いていて、世界中の綺麗な光だけを纏っていた。
(……ずるい)
白い肌と、長い睫毛に縁取られた紅い瞳。すっと筆で引いたような鼻筋。
唇は薄くけれどふっくらとしていて、桜の花びらを落としたみたいで。
彼女は、そのどこをとっても綺麗だった。
洗練されたその容貌は、教科書で見た何億と値のつく彫刻や絵画の女性像さえも敵わないとさえ思えた。
こんなこと言うと付け上がるから、絶対口には出さないけど。
私は、彼女に強く憧れていたんだ。
出会ったあの瞬間、姿が網膜に焼き付いた。――そう、それはまるで、トラウマのようで。
私はきっとこの先も、ずっと忘れることは出来ない。
今も私の中で、彼女の存在は大きくなるばかりなのに。
なのに彼女の中の私は時間と共に風化し、いつかは存在そのものがなくなってしまうんだろう。
優しい彼女のことだから「そんなことはないよ」といってくれる。なんとなくわかった。
実際にそうあって欲しいと切実に願う。
でも、永遠なんて、ない。
もて囃された流行ものが、新しいものの出現と共に過去の産物とされるように。
ああ、そんなのあったね、懐かしい。そんな言葉で簡単に終わらされてしまう。

「……はぁ」
「なのは。人の顔見て溜息吐かれると、流石にショックだよ?」
 
フェイトちゃんが口を尖らせる。いつものやり取りだと思ったんだろう。
だから私も、眉を吊り上げた。

「うそつき。そんなこと全然思ってもないくせに」

頬を膨らませた私の顔がよほど面白かったのか、静かな笑いが吹き出すようなものへ変わる。

「……そんなに笑わないでよ」
「ふふ……ごめんね。ほら、そんな顔、しないで? せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」
「……っ、」

 さらり。テレビの中でしか聴いたことがないようなセリフを告げられた。
いつもの笑顔を崩さないまま触れられた細い指は、私以上に冷たかった。
ひやりとした温度が心地いい。フェイトちゃんは低体温だ。お風呂から上がったときだっていつも冷たい。
弾力を楽しむように柔らかく押し込まれ、そっと輪郭をなぞられる。
 右の頬から、顎を通って。まるで、猫を撫でるように。
ゆるりと擽られた喉が、空気を取り込んで小さく鳴る。
――ねぇ。
フェイトちゃんは、より一層笑みを深くして。

「可愛い。……触れたところから赤くなっていくみたい」
 
ゆったりとした声。なのに、熱を含んで耳元に響いた。
低く囁くような声が鼓膜を震わせ、声色に心臓を直接撫でられていく。

「――は、」

どこまでも深い紅色。
血のような、炎のような。身を焦がす熱を、錯覚させる。
逸らした視線。さっきまでは緩やかだった指先に、僅かな力が籠められた。

「離、して」
「初めに触れてくれたのは、なのはだよ?」

こんなチャンス滅多にないから。なんて。おもちゃを見つけた子供の無邪気さで、フェイトちゃんは笑う。
こういうときの彼女は本当にずるい。普段、無理強いはしないから、なんて言うくせに。嘘ばっかりだ。

「……フェイトちゃん、いっつも恥ずかしいことばっかり言うから、ヤダ」
「だって、本当のことだよ?」

 ほら、また。

「なのは」

抗議を遮る、私の名前。さっきとはうって変わる声色に、声が詰まる。
ううん。いつだって彼女の声は優しかった。
身体に温度があるように、言葉にも温度があるということを、私は彼女と出会って初めて知った。
こんなにも優しい声で私の名前を呼ぶ人に、私は今まで逢ったことがなかった。

「違う」

――違うよ。刷り込みだ。これは、そんなのじゃない。違うんだよ。

「なのは。こっち、向いて?」
「……やっ」

 いつもそうだ。離れたいときに限って、彼女は手をさし出す。
絶妙のタイミングで、拒絶を否定する。
 柔らかく掴まれたはずの手のひらは熱く、苦しくないのに息が上がった。

「なのは。ごめん、怒らせるつもりはなかったんだ」

 覗きこまれた瞳。痺れるような甘い匂い。
香水とも違う、彼女自身の匂い。
嗅覚から記憶が引き出され、どうして熱がないのだと勝手に唇が震えた。
温もりが欲しい。反射的に伸ばしたくなった手のひらを握りしめ、肩に押し付けた。

「怒ってなんか、ないよ……? その、ちょっとびっくりしただけだから」
「……そっか」

 笑え。――思うだけなら簡単だった。
らしくない反応と不穏な空気が感染したのか、フェイトちゃんの反応も、らしくなかった。
 制御できそうにない感情が溢れて、思考を遮断させる。いま私は、どんな顔をしているんだろう。
見られたくなかった。
特に、フェイトちゃんには。
覆い被さった身体を起こすと、やっぱり彼女はさっきまでと変わらない瞳で、私をまっすぐ見つめていた。
いっそ、このまま何もなかったことにしてみようか。

「うん?」

 緩やかな笑顔。赤い耳。白い頬。浅く息を吐く肩。
 ――出来るわけない。こんな彼女を見てしまったら。
本当は痛いはずなのに。必死に誤魔化した笑顔は道化師のようだった。
そうしてまで私のペースに合わせてくれているのに、我侭と強がりで振り回して。――馬鹿だ。

「こっち、こっち向いて」
「……してくれるの?」

彼女の体力と時間をすり潰しただけの言い合い。そう、わかりきっていたのに。

「あんまり言うと、もうしないよ?」
「うん、じゃあ、もうなのはが嫌がること、言わない」
「嫌じゃないけど、恥ずかしいのっ」

 くすり。笑いを深くしたまま、顎先が上げられた。ゆっくりとした動きの中に、全てを閉じ込める。
屈められた肩から滑り落ちた髪が、フェイトちゃんの頬にかかる。
空いた手で押さえつけようとすると、紅の瞳がすっと細められた。
さっきよりも柔らかな手つきで一筋手にとり、梳られながら指が触れる。

「なのはの髪は、綺麗だね」

露出した耳に掠めた熱が、じわりと身体に染み入る。

「抱きしめて、いい?」

 寸瞬遅れた答えは待たれず、両方の手が伸ばされた。
背中へと回される腕。甘い香りが濃くなった。彼女の腕の中に包み込まれる。
受け入れてくれたんだ。
錯覚を覚え、無意識に肩口に手を添えた。

「――、」

遠巻きに見れば抱き合うような格好。
よくよく見れば、抱きしめあうというには不恰好に寄せあっただけの肩。
(違うん、だよ)
 倒れ込まないために手に力をこめると、何を勘違いしたのか、喉を鳴らすような笑いが降り注いでくる。

「なのは」

鼻先を傾ければすぐにでも触れ合える距離で、ただ吐息だけが絡む。
こういう時、フェイトちゃんは決まって私の名前を呼んでくれた。

「なのはからしてくれるのは、初めてだね?」

雰囲気に似合わない軽い口調に、初めて気が付く。
こういうことをしてくれるのはフェイトちゃんからで、私からは一度もなかった。
『キスしようよ』
断片的に思い出された言葉とキスは、いつだって、とても優しかった。

「緊張、してるの?」
「そんなわけないでしょう!」

 茶化すような言葉に噛み付く。
いつだってそう。私だけが子供で、こうして憎まれ口を叩くことしか出来なくて。
(ああもう。――だめだ)
喉を塞いでいた空気を吐き出す。
細められていく視界には、傾けられた線の細い顎先だけが見えた。
(――フェイトちゃん)
零れた吐息に交じる名前が、塞がれた唇の中に消える。
触れ合った唇越しに、押し込んでいた熱が一気に溢れ出した。
侵食された思考が、掻き乱されていく。

「……ん、」
「は、……ぁ」

掴んでいたシャツをさらに強く握った。何かに触れていないと、足元から崩れ落ちてしまいそうだった。

「なのは」

手が外され、背中へと回される。
本格的に抱き合うようになった形に抵抗の意味を添えて胸元を押し返すと
、吐息とも笑いともとれる呼気と共に引き寄せられた。

「……は、ぁ」
「ん、……は、」

隙間なく抱きしめあう身体はひたすらに柔らかく、傷つくものはないはずなのに、胸が痛くてたまらなかった。

「      」

 確かにそのとき、何かを告げたかった。
でも、息継ぎのような短い言葉が、塞がれた唇に飲み込まれていって。
私はそのまま、フェイトちゃんに身体を預けた。

「ん……、ふぁっ」
 
震えた喉から小さな息が零れると、その言葉をなぞる様に唇が動かされる。
 角度を変えて、口づけて。

「……は、」

吐きだせない言葉の代わりに、私たちはただ繰り返す。何度も。何度も。
溺れそうになって息を継ぐと、籠っていた力がふっと抜けた。
それを褒めるみたいに、とんとんって背中が擦られる。
(ああ、そっか――心配してくれてたんだ)
思えば、フェイトちゃんはいつだってそうしてくれた。大丈夫だよ、大丈夫だよって。
言葉だけじゃなく、全身で私に伝えてくれていた。
悔しかった。
いつも私ばっかりだ。

「……っ」

明るくなった視界の中で、一番初めに飛び込んできたのは紅の瞳だった。なんだか嬉しそうに微笑まれて。
それから、眉が下げられた。
 瞬間、熱が、足元から床へと抜け落ちていく。
やり場のなくなった手のひらから、籠っていた温度が霧散していくのが嫌で。
空気さえ掴みたくて、強く握りしめた。
申し訳なさそうに離された身体はもう残り香さえなく、胸を焦がした埋火と寂しさだけが残っていた。

「ごめんね、なのは。やっぱり、嫌だったよね」

 繰り返されるこの謝罪を、私は幾度受け取っただろう。

「どうして謝るの。私が決めたんだよ?」

ぐっと唇を噛みしめる。強く、強く。
痛みを感じるくらい強く噛みしめて、さっきまでの感触をなくしたかった。
口から出かかる言葉を、舌で潰す。飲み込んだ欠片は喉を詰まらせ傷をつくるばかりで、余計に痛かった。

「フェイトちゃんは。変なところで心配性だよね?」
「……そう、かな?」

赤みを帯びた頬に手を沿わせると、猫が甘えるように、すり寄せられる。
そこには、かつての艶やかな毛並みは感じられない。

「もう、痛くない?」
「うん。ありがとう、なのは」

 心が静かに波打った。ぽたり、ぽたり。雫が落とされる毎に。安定なく、ゆらゆらと。

「明日、なんだよね」

吐き出した声は自分のものなのに、びっくりするくらい低く掠れていた。
何度も力いっぱい、叫んだ後の声みたいだった。
否定することなく、フェイトちゃんは静かに一つ頷いた。
そうだね。唄を歌うように返された声は、今まで聞いてきたどの言葉よりも鋭く私の心を裂いた。
わかっている。
 私たちが一緒に居られるのはあと数時間。それが過ぎれば、もう、互いに会うこともなくなる。
このとんでもない日々から解放されることは、私にとっても願ったり叶ったりのはずだった。
これで二人からもあらぬ誤解を受けなくて済むし、恋人じゃない人とキスだってしなくて済む。
フェイトちゃんも、ずっと願い続けていた人のところに、帰ることができる。
元ある道を歩き、元ある場所へ帰るだけ。
 頬を包み込む手のひら。なぞられた指の意図を分からないふりして、狡い私はそれを握りしめた。

「フェイト、ちゃん」

 愛の告白の様な思いで、私は彼女の名前を呼ぶ。
そんな私の激情を流し、子に与える愛情の様な優しさで彼女は私の名前を呼ぶ。
(わかってるんだよ)
 私たちは、キスが出来るほど近い距離に居ながら、けれどキスでしか繋がることが出来ない。
 ――初めにそれを良しとしたのは、私。
どうしてなんて、責め立てられるような立場じゃない。
文句を言いながらも留めていたのは、何も責任感とか偽善とかそんな理由じゃなかった。

「なのは」

 帰るべき場所も、家族のことも、彼女の本当を何一つ知らない私が、一体彼女の何を独占できるというんだろう。したいというんだろう。

「うん、」

 わかってるんだよ。ちゃんと。
だから、お願い。そんな優しい声で名前を呼ばないで。苦しいよ。勘違いしちゃうんだよ。
向けられた優しさも、笑顔も、全て。 
 嫌い。嫌い。フェイトちゃんなんて――大嫌い。私は、フェイトちゃんのこと、好きじゃない。
 好きなんかじゃ、ない。






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プロフィール

汐薙

Author:汐薙
初めまして、汐薙と申します。
魔法少女リリカルなのはで活動中。

主な取り扱いカップリングは
フェイト×なのは
はやて×なのは です。

リンクフリーですので、貼るも剥がすもご自由にどうぞw
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