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【Fuzzy Navel 7話】



Fuzzy Navel 7話です。




友情とは別のものが交じってしまったそれは、もう、友情とは呼べない。
いつだったか。そんなことを考えたことがあった。

だから、だろうか。


この頃よく目にするようになったファジーネーブルは、まるで私達を思わせる。

曖昧な、感情。関係。

不意に見た外面上は全く変わらないもので。
けれど口に含んでしまえば最後、こんなにもはっきりと分かってしまう。

いくら仄かなものでも。




――からん。

僅かに溶け出した氷が、声をあげるように小さく音を立てる。
うっすらと色の着いた光が、テーブルをその色に染めた。

甘い日常に浮かんだ、氷のような。手に触れれば芯すら凍らせるような現実。
やがて溶けだしたそれが、全ての境界線さえ曖昧にしてくれることを信じて。

弱気な思考を飲み干す。



そうして口に残ったのは、ただ一つ――。











【Fuzzy Navel 7話】








なのはは静かな瞳でこちらを見ていた。
緊張で妙に乾いた口の中で舌が張り付き、声にならない空気が一つ漏れた。


「君の為にも、」


ひゅう、と。小さく鳴った吐息さえ隠したくて。笑顔を作る。
ぎちりと軋んだ頬と共に作りこんだものはおよそ笑顔と呼べるものではなく、
誰が見ても、自分さえも泣き顔の様なものだった。


(……ああ、どうしよう)


対面の窓ガラスに映りこんだ紅い瞳が、自分を責める。
傷つける前に傷つけようと、そう思っていたのに。


(こんなにも、君が愛おしいから)


その勇気さえ私にはなく、握りこんだ拳が震える。
一言声に出すだけでいい。ここにはもう来るなと。逢いたくないのだと。

なのはが泣いちゃうくらい厳しく言って、私のことを嫌いになってくれればいい。
そう思っていたのに。


(……嫌だ)


なのはがここに来てくれて、居てくれて。
それで自分がどれだけ救われたのか、痛い位分かっているから。だから。
言うことを聞かなくなった自分の心が耐え難く、それを手放したいが故になのはを傷つけることなんてできなかった。

そんなの、絶対に、違う。

だって、勝手に好きになったのは、私の方なんだよ?
なのは、何にも悪くないんだよ?


出会えたことに感謝することはあっても、自分のものにならなくて怨むことなんて、違う。
どんなに苦しくても、辛くても。心が潰れちゃいそうになっても、違う。


(そんなのは……違うんだよ)


だって私は、見たかった。花開くような、綺麗な笑顔を。
――それが、例え自分に向けられていなくても。

綺麗ごとなのはわかってる。
昨日の夜に思ったことだって、全て私の本心だ。

それでも。


「……フェイトちゃん?」


不安そうな声にきつく瞑っていた瞼を開く。
普段とは違う様子の私を気遣う声と、心配そうな表情。

軋んだ心を騙して。笑う。
意識をしていなかった頃の自分は、どうしていただろう?

それを重ねて、言葉に乗せる。


「ごめんね? そんな顔、しないで?」


少し癖のついた髪を撫でる。さらりと指先が通ると、触れた温度に驚いたのかなのはの肩が僅かに跳ねた。
こうして触れることは思い出すのが難しいくらい、遠い昔の事のようだ。


「あのね……これからは、あんまり無理してお店、手伝わなくてもいいよ? って、言いたかったんだ。
 昨日だって遅かったでしょう? なのははただでさえ忙しいんだから、休める時はゆっくり休んだほうがいいよ」


その言葉に、なのはは困ったように笑った。
迷惑だったかな? 小さく告げられた言葉に何度も首を振る。


「そんなことない。……これは、私の我がままだから」
「私、無理なんてしてないよ?」


頭半分ほど低い位置にある、端正な顔。
ふと、気付いた。

それは……一体、いつから?


「隈、出来てる」


なのははいつだって優しくて、一生懸命で、真っ直ぐで。
そんな所に惚れて、大好きになってしまって。

でも、ああ、ほら。

白く可憐なそれには似合わない、濃い影。
こんなにもくっきり見えているのに、どうして今まで気付かなかったんだろう。
傍にいることに精一杯で、見るべきものを見落としていた。

なのははずっと、無理してたんだ。
忙しいはずなのに、そんな素振りも見せないで、ずっと。

そんなことにも、気付けなかったのに。
君が大事なんていう資格、ますます、ない。


「大丈夫。今までだってそうしてきたし、私一人でもなんとかやっていけるから」


蒼い瞳が、僅かに揺れる。
その意味さえ分からずに、私は口を開いた。


「それでも手伝いが必要になったら、出来るだけはやても呼ぶようにするよ」


ひゅう。小さく聞こえた音は、私からではなかった。
唇をかみ締めるように笑って。


「フェイトちゃんは、…………」


それ以上、言葉は、続けられなかった。
最近私も大分忙しくなったからなーって、なのはが何度も頷く。


「ごめんねフェイトちゃん。心配、かけちゃってたね?」
「…………、」


笑顔だった。でも、――どうしてだろう。
なんだか、違う。


「泊めてくれて、ありがとう」


帰り支度を済ませたなのはが、丁寧に会釈をした。


「……私の方こそ。ありがとう」




スタートラインに戻ろう。そう思った。

一から始まった今度は、ちゃんと、友達同士になるんだ。

大好きだよって。君のことが大事だよって。
じゃれ合いながらもちゃんと言える、そんな友達に。


(本当に?)


締められていくドアに、なのはの姿が削られていく。
これでよかったはずなのに。それを見ていることが耐えられなくて。

手放したくて、手放したくなくて。


(私は。今まで通りに、いられるの……?)



「…………ぁ、」



手を伸ばせばギリギリ届く距離で。
それは、私の気のせいかもしれない。けれど、なのはがほんの少しだけ、踏みとどまったように見えて。

反射的に、ぐっと手を握り締めた。


(あったかい。……柔らかい)


それだけを確かめたくて、瞼をきつく閉じる。
視界がすっかり塞がれると、あたりは真っ暗で。何も見えなくって。

手のひらに唯一伝わる、体温。


(ああ、もう。……めちゃくちゃだ)


今まで堪えていた何かが、身体から抜けていくのを感じた。
痛い位硬く閉じた瞼の向こうは暗く、吐き出した息が震える。

しんと静まりかえった部屋は、もう昨日の跡形さえ残していなくて。
空いたほうの手のひらを、ドアへと押し付けた。


(今になって、こんな)


閉じられたドアが目の前を塞ぎ、逃げ場のなくなった世界。
傷つけたくないとか散々言ってきたけど。それは一体誰にだったのか。

――誰を、だったのか。



「なのは」


反響し、小さかったはずの震えが大きく返される。



大人になるって、どういうことだったのかな?
さっきまでの私で、当たってたのかな?


だとしたら、私は。

ごめんね?


「私は、」


大人になんて、なれないよ。





好きというものが、分からない。

焦がれるような、焼き切れる様な。そんな想いを知らない。


だから私は、好きと言う感情が欠落していて。
そんな想いに愚鈍な人間が紡ぎだした感情は、歪すぎてどうしようもなくて。


(それでも、とか。だけど、とか。……私は、いつだって言い訳ばかりだ)


何が正しくて何が違うのか曖昧で、分からなくて。

こうだと決め付けた形から外れることが怖くて。未熟な心を見せることが、もっと怖くて。
自身の手で砕いた硝子細工を、ずっと、隠すように両手で覆って。

いらないなら捨てればよかったのに。捨てられなくて。
カケラも零さないように、大事に抱え続けてきた。

触れた手を傷つけ、濡らし、痛みに喘いで。
そうしてきっと、いつか抱えていることすら忘れていけるのだと思った。

時間が痛みを消し、思い出を消し、この愛しさまで消してくれるのだろうと。
いつか誰かの隣で笑う君を、笑顔で迎えられるのだろうと。


それが、最良の選択であるのだろうと。
――君の隣を歩んでいける、最善の手段なのだろうと。

永遠に自分を騙して。
永遠に君さえも騙して。







どれだけ隠そうとしても、それは確かに存在していたのに。






⇒【Fuzzy Navel 最終話へ】

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