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Fuzzy Navel 4話


Fuzzy Navel 4話です。


顔に吹き付ける風は冷たかった。
肩を竦めても手をすり合わせても暖は取れず、温かいかなと吐いた息さえ、視界から寒さを伝えた。

すれ違う人たちは、マフラーや手袋といった完全冬支度だ。
一人ジャケットを羽織っただけの私は場違いのようで、しまったと俯くしかない。

言い訳だけど。昨日までは、そんなに寒くなかったんだ。
もう昼過ぎだからと油断したのがいけなかった。

マフラーをしようかは悩んだ。一瞬でも。
でも、まぁ気分転換にご飯食べに出るだけだし、いいか。

なんて。

戻れるものなら、軽い気持ちで家を出た時の自分を全力で止めたい。
そうすれば今、こんなにも寒い思いをしなくて済んだのに。



頭の中で一人ごちて、白い息をたゆたわせながら通りを歩く。


(それにしても……)


視線だけで辺りを見渡してみれば、葉が落ちきって寂しい感じのする街路樹とは裏腹に、通りは賑やかだった。
時間帯のせいだろうか。普段ならあまり混雑していないはず飲食店はどこもいっぱいで、時には外にまで列が出来ている。

そのほとんどはサラリーマンやOLの姿で、輪をかけて失敗した、と思った。


(ここ、大通りだからなぁ)



確かにお腹は減っているけど、待ってまで食べる気にはなれない。
でもだからと言って、時間がもったいないからと家に帰って机に齧りついても、いいアイディアは出ないだろう。
それは先程までのことで、痛い位わかっているから。

だからこそ、こうして外を歩いているわけで。


同じくらい時間を浪費できるなら、気分転換になるほうがよっぽどいいと思う。
どこか開いているお店を見つけて適当に入るか、それが無理ならコンビニで買って公園で食べてもいい。

暢気に考えながら、あわよくばアイディアは落ちていないかと気ままに歩くと、いつの間にか会社員の姿は疎らになっていた。
その代わりに、段々と近場の学生らしき子達の姿が多くなり始める。

これから戻るところなのだろうか。
コンビニの袋を持っている子達が、なんだか楽しそうに笑いあっている。

ああ、自分もあんな時代があったなぁ。


「……ん?」


ふと。見慣れた姿を見た気がして、目を凝らす。
男女が入り混じるグループは和気藹々と話し込んでいて、何だか話しかけ辛かったのだけれど。
それでもと声をかける前に、その内の一人が、あ!っと驚いたように声を出した。


ああ、やっぱり。
苦笑を零しながらも、控えめに手を振り返す。


「こんにちは、フェイトちゃん!」


元気いっぱいの声に思わず笑みが零れる。
うん、こんにちは。少し掠れた声で挨拶すれば、嬉しそうな笑顔が返される。
この寒さのせいだろう。ほんのり染まった頬が愛らしい。


「こんな所で逢うとは思わなかったよ」」
「うん。私も」


聞けば、どうやらなのはは、友達と一緒にお昼を食べに行っていたらしい。
外で会うのは初めてだから、知らない一面を見たようでなんだか新鮮な感じがした。


「うん?」


言葉の詰まった私に、蒼い目が不思議そうに向けられる。
いや……と。曖昧に濁して。


「なんていうか……その、なのはもちゃんと学生だったんだよね?」
「えー、……むぅ。そんなに不真面目に見えるのかな?」


和やかな雰囲気に、見知らぬ私への警戒も溶けたのだろう。
近くにいながらも遠巻きな雰囲気を放っていた彼らも、こんにちはと会釈してくれた。

なんだかあまりお邪魔しても悪いかなぁ、なんて。
多少の居心地悪さを覚え、それじゃあと告げようとした時。

なぁ、と。その内の一人が言葉を遮った。
男の子だった。

こちらを伺うように、一度だけ視線を向けて。
けれど、すぐに顔が逸らされてしまった。


「……友達なの?」
「えへへ、ないしょー」


なのはが笑ってそれに答える。
でも。私は、なのはみたいには、笑えなかった。


(なんか、もやもやする)


私は、なのはのこと、大事な友達だって思ってる。
でも、もしかしたら。

なのはは、そうは思っていないのかもしれない。


ひやり、と。冷たいものが背中を流れた。

友達じゃない、ただの知り合いだよ。そういわれてしまうのが、怖くて。
なのは口から告げられるのが、怖くて。


「友達だよ、……ね?」


告げた言葉は、まるで促すようで。
聡い彼女の事だ。そんな卑怯者な考えが、読み取れたのだろうか。


「うん。そう。……友達、だよ?」


大丈夫だよって。言葉にするみたいに、なのはは笑った。
そのことに安堵して、すぐ近くの彼女に知れないよう胸を撫で下ろす。

……よかった。
少なくともなのはは、友達だと思ってくれている。


「それじゃあ、そろそろ行くね?」
「あ、うん」


ばいばいって手を振って。去っていく背中を見送る。
暫くすると、先程の男の子が、なにやらなのはに話しかけているのが見えた。

遠目でも分かるくらい、なのはの頬が染まって。
嬉しそうに笑う彼女の横顔に、また、あのもやもやが広がった。
それどころか、今度はずきずきと痛みまで伴ってくる。

……なんだろう、これ。


ぎゅっと抑える。
苦しくって、涙が出そうだった。


(なんか……なのはと会ってから、こんなことばっかりだ)


俯くと、不意に何かが音を立てて鳴りだした。

一瞬跳ね上がった身体が辺りの好奇な視線に晒され、それから逃れるように慌てて鞄から取り出す。
長年使っているはずなのに未だに慣れない携帯電話は、着信を知らせるランプが点灯していた。


未読メール、一件。


私が携帯不精なのを知っているはやては、滅多にメールなんてくれないし。
そうとなれば、私のアドレスを知っているのは一人しかいない。

開けば、差出人はやはり彼女だった。



『逢えて嬉しかったよ。今日、遊びに行ってもいい?』



短いメール。

何度も何度も読み返して、間違いじゃないことを確認して。
返事をしていなかったことを思い出し、慌ててボタンを打ちつける。


『うん。待ってる』


なのはにも負けないくらい短い文を返すと、携帯を握りしめた。
ああ、どうしよう。なんだろう。

こんなにも、嬉しいなんて。





【Fuzzy Navel 4話】




来客を知らせるチャイムに、勢いよく頭を上げる。
瞬間くらりとした視界に目を瞬かせると、いつの間にかずいぶんと時間が経っていた。


「……、いけない!」


辺りを見渡せば、まるで嵐が室内を吹き荒れたかのような始末で、血の気が引く。
どうしよう、なのはが来る前に片付けようと思っていたのに。

お店が休みの日は、どうにも時間間隔が狂ってしまう。

とにかくなのはを待たせるわけにはいかないと、慌てて玄関に向かった。
ドアを開けば、昼間よりももっと冷たい風が流れ込んでくる。


「こんばんは、フェイトちゃん」
「うん。いらっしゃい、なのは」


なのはの頬は赤くなっていて、なんだか先程まで室内にいた自分が申し訳なくなった。
早く温かいところへ連れて行ってあげたくて、招き入れる。

が、現実はなんともアレなことになっていて。

やはりびっくりしたように、なのはが辺りを見渡した。
適当にかけて、といいながらもその場所が確保できそうになく、なんとか空間を作るべく紙片を寄せる。


「ごめんね、散らかってて……」
「ううん。大丈夫だよ? ……新メニューの研究?」


さすが、ご実家が喫茶店なだけある。
すぐにこの惨状の原因がすぐに言い当てられた。

頷けば、大変だよね、となのはが苦笑を零した。


「少しでもメニューが増やせられたらな、って思ってたんだ」
「そっか」


付箋だらけのノートを、なのはが興味深そうに見ている。
字、凄く綺麗だね。なんて。なのはにとっては独り言のような小さな言葉さえ、嬉しくて。
気にも留めない振りをして、テーブルにばら撒かれてたメモをかき集めててクリップで留めた。

頭の中に散らばった断片も、こんな風に簡単にまとめられたらいいのに。なんて。
そんななんとも雲を掴むような気持ちに、思わず苦笑を零す。


「少しはまとまったんだけど……なかなか、ね」
「そうなの?」
「うん。……これとか」


やっと片付いた机周りに息をつき、隣に腰を掛ける。
指差した先を覗き込むように、なのはがこちらに身体を寄せた。


「……っ」
「これ……?」


ふわりって。いい香りがして。
そしたらまた、どきどきして、苦しくて。

訳わかんなくなっちゃって。


「う、うん」
「わー、確かに美味しそうだね! ……どんな味なのかなぁ?」

「よかったら試飲してみる?」


それでもただ、なのはの笑顔が見たかった。
初めて逢ったのが泣き顔だったから、ずっと笑って欲しかった。

多分、それだけだった。












そんなに強い度数ではなかったはず、なんだけど……。


先程からなのはの顔が妙に赤いなとは思っていた。
返事も緩慢になってきていたし、まさか、とは思っていたけれど。


「……ごめんなのは、大丈夫?」
「うー、らいじょうぶー」


ゆるゆると手を振っているものの、妙に危なっかしい。

どうやらなのはも私と一緒で、あまりお酒が強い性質ではないらしい。
はやてと一緒に飲んでいたときはそんな素振りすら見せなかったから、私もつい油断をしていた。

最後に欲しがった、ファジーネーブル。

あれがいけなかったのか、なのはは急に酔いが回りだしたようだった。



「大丈夫? 立てる?」
「ん……」


その足取りさえ怪しく、引いた手は凄く熱かった。
……これは、完全に泥酔してる、よね。


「なのは、今日はもう泊まっていきなよ、ね?」
「んー、う」


大丈夫だよー、なんて。なのはが陽気に笑う。
でも。私は、全然大丈夫とは思えなくて。絶対駄目だよと返す。

そんな攻防が続き、痺れを切らして有無を言わさず身体を抱き上げた。


「よっ、と」
「にゃ……」


耳元で聞こえた子猫みたいな声と、手のひらに触れた柔らかな熱。
それらにショートしそうになる思考を、無理やり起動させて。


「ごめんね。こうなったのは、私の責任だから。……今日は、私と一緒にいて?」


なんとか必死に言葉を紡ぎ、ベッドへと寝かせる。
なのはは俯いたままだった。

空気を求めるように唇が微かに動いたけれど、言葉は聞き取れなくて。
向けられた笑顔が、僅かに陰りを見せたみたいで。

覗き込めば、なのはがぎゅって抱きついてきた。


蒼い瞳が、揺れる。
こちらに向けられても、けれど、それはどこか遠くを見ているもののようで。


「なのは」


視界に映されていない。
それが怖くて、名前を呼んだ。


「あのね? ……だいすき、だよ」
「…………え?」


触れたのは、一瞬だった。
いや、触れたかどうかも分からなかった。


でも。
なのはは確かに、安心しきったように微笑んだ。




「…………っ」



目の前には、すっかり寝息を立てているなのは。
まるで夢みたいで。私まで酔ってしまったみたいに、なんだか頭がふわふわする。

言葉と熱が、ぐるぐる、回って。
思わずへたり込んだ。


だって。


今までだって、抱きついてくれることはあった。
なのはは酔うと、その、抱きつき癖があるみたいだったから。

その度に、もう、なのははー、なんて笑って答えた。

でも、違う。


本当は、その度に心臓が、ばくばく言ってて。

今だって、そうで。




(どう、しよう)



ああ、って。思った。
この瞬間、やっと。答えを、貰った気がした。


ああ、私。







なのはのこと、






今だオレンジの香りが残る唇に触れて、俯く。
ぼろぼろと、涙が零れた。


「…………っ、ぁ」


どうしよう。


知りたく、無かったよ。
この気持ちが、そうなんだってことに。

嗚咽をかみ締めて。溢れる涙を飲み込んだ。



「それは、私にじゃ、ないんでしょう?」



わかってるのに。
なんで、こんなに痛いんだろう。


君だけは、好きになっちゃだめだった。
なのはだけは、だめだったんだ。



だめだった、のに。


突きつけられた現実が、涙で歪んで。
それでも、蛍光灯の光をうけてきらきらと眩いくらい輝いている。

無性に悔しかった。


「そんな可愛い顔で、言わないでよ」


ずるいよ。








だって。



だって、




私、知ってるんだよ?




「……っ、ぅ、あ……」










もう離れてしまった、今でさえ。
右手の薬指にありつづける、指輪の意味くらいは。










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Author:汐薙
初めまして、汐薙と申します。
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