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Fuzzy Navel 3話



好きという感情が、欠落している。
それが、自己分析における自身への結果だ。


『こんなに好きなのに、どうしてですか』



それは。
今まで、一体何度言われた言葉だろう。

本当は冷たい人なんですね。それなら、なんであの時優しくしたんですか。
優しさを知らなければ、きっと、こんな想いをしなくてすんだのに。

そう言って。

最後に向けられるのは、いつだって泣き顔だった。


その度に、自分はなんて酷い人間なのだろうと思った。
傷ついたけれど、それよりもっと相手を傷つけたのかと思うとたまらなかった。

同じ想いを返せなくて申し訳ないとは思う。


でも。
どうしても、分らないんだ。


家族への愛。
親友への愛。

そんな愛はわかっても、恋というものは分らない。


苦しくて、切なくて。
泣きなくても泣けなくて。

身が焼ききれるような。
焦がれるような。

そんな想いを、私は知らない。


だから。


私は、誰かを好きになる資格なんて、ないのかもしれない。

そう、思っていた。




【Fuzzy Navel 3話】



「ん……、」


ゆるゆると、重い瞼を開く。

感じられたのは、目に痛いほどの光。
カーテンの隙間から差し込むそれに、思わずきつく目を瞑った。


何度か瞬かせるとやっとのことで順応したのか、曖昧にぼやけた影達が色と輪郭を取り戻していく。
自分の意思に反して気だるい身体はまるで、マットに沈み込んでしまったかのようだ。
えいやっと心の中で掛け声をかけて一気に起こすと、その反動で頭が痛む。


「……っ、たた」


よろけた身体をとっさに右腕で支えると、沈み込んだスプリングの反動でさえ頭に響く。
久方ぶりの感覚に、もう一度だけ眉を顰める。

明らかに飲みすぎだ。


(……それも、しょうがないのかな)


はやて以外の人と宅飲みするのは久しぶりで、ついついセーブを忘れてしまった。
話をお酒の肴にし、気づけば大分、缶を空けた気がする。


「うー、喉いたい」


お酒焼けしたのか、ひりひりと乾いた喉で一つ咳き込むと、鼻腔をふんわりといい香りが掠めた。
なんだろう……? なんだかこう、ひどく懐かしいような。そんな匂いだ。
一瞬気のせいかとも思ったけれど、突きつけられた匂いは胃を酷く刺激する。


(……?)


のろのろと起き上がって、匂いの元を辿る。
キッチンへと続く扉を開くと、朝の陽を弾いた亜麻色の髪が見えた。


「あ、おはようごさいます、フェイトさん」
「えっと……あ、うん。おはよう」


挨拶を返すと、くすくすと可笑しそうな笑みが向けられた。
よほど面食らった顔でもしていたのだろうか。あはは、と情けない声を出し、笑みを返す。

すると、あ、って。なのはが小さく声を上げた。
ぐっと伸ばされた手のひらが、頭に触れて。

柔らかな温度に、思わず声が出そうになって。
それをぐっと押さえると。


(……わ、わっ)


ゆっくりと。慎重に。
やがて、髪を梳くように指を通される。


(……なんだろう、この感じ)


ふわふわして、あったかい。
なんだかまた眠ってしまいそうになって。目を擦った。


「起こしてしまいましたか?」
「ううん。そんなことない、けど……」


本当にそんなことはなくって。
言葉を濁したのは、びっくりしたから。

永い間正式な用途に使われていなかったダイニングテーブルは今は見る影もなく、純和風な食卓へと変化していた。
出来立てのおみそ汁と焼いた鮭、それからのりに卵。
まるで、どこかのホームドラマのような光景だ。


「……美味しそう」


ぐー。とお腹が鳴って、思わず押さえつける。
控えめに零した言葉とは裏腹に、なんて自己主張の強い身体だ。
いよいよ忍び笑いが堪えられなくなりそうになっているなのはに、顔の熱が爆ぜそうになる。


「えへへ。よかったらどうぞ?」


何だか違うお宅に迷い込んでしまったような感覚のまま、促されたテーブルへと着いた。
温かいうちにと口を付けたおみそ汁は、空っぽだった身体に染み渡るみたいで。

僅かに息を零す。


「昨日のお礼、というには足りないかも知れませんが……」
「そんなことない。どれもすっごく美味しいよ」


誰かと向かい合って食卓につくなんて、何年ぶりだろう。
いや。それどころか、こうしてちゃんとした食事を摂ること事態、いつだったか分らない。


(なんだろう……?)




ああ、なんか。





「ごちそう様でした。美味しかったよ」
「えへへ。ありがとうございます」


最後のお皿を片付けると、いつもの光景へと戻った。
何もなくなってしまったテーブルは、さっきまでのことが嘘みたいで。
それがいつものことなのに、なんだか妙に寂しくて。悲しくて。

帰り支度の済んだなのはを送り出す為に、一緒に玄関へと向かう。
ぺこり。私に向かって、なのはは深くお辞儀をした。


「……急にお邪魔しちゃって、本当にすみませんでした」
「ううん。私は、全然大丈夫だから」


君は?

小さく返すと、なのはは笑った。


「はい。もう大丈夫です! 昨日、いっぱい泣かせてもらいましたから」


えへへって。はにかんだ笑顔。
それは、昨日よりも晴れやかなものだったけれど。

まだ、うっすらと、翳りはあって。


胸が、痛んだ。







「それじゃあ、お邪魔しました」


かちりって。鍵が開いた音がして。
暗いままの部屋に、光が差し込んで。

背が向けられて。なのはの足が、動いて。
ぴたりって。すぐに立ち止まった。


「あの、……フェイト、さん?」
「……え?」


急に呼ばれた名前に首を傾げる。
少しだけ困ったように、なのはは俯いた。

どうしたんだろう?
不思議に思ってみれば、自分の手が映りこんだ。


「あっ」


ドアノブへとかけられたなのはの手を、しっかりと掴んだそれは。
まるで、なのはのことを、引きとめているみたいで。


「……ご、ごめん」


謝って。でも、硬直したみたいに、手は動かなくって。
心の中でいつの間にか広がっていたもやもやが増した気がして、私も俯いた。




長い長い沈黙を経て。
震える唇を開く。



「あのっ、」


搾り出す言葉はたくさんあるはずなのに見つからず、息が詰まる。
それでも。曖昧な接続詞に形をつけて、どうにか先へと繋げたくて。


「君が、」


向けられた蒼が、綺麗すぎて。
真っ直ぐに見つめ返すのが、怖いほどで。


「なのはがいいなら、また、遊びに来て欲しい、な」



どうにか言葉にすると、途端に不安が増した。




(こわい)



はやてにだって言っている言葉なのに。
どうしてこんなにも戸惑いが混じるんだろう。

わからない。でも。

沈黙が。返って来る答えが。
凄く、怖い。


「フェイトさん」


頬に触れた指が温かくて。
何かを拭うような動作に、やっと、自分が泣いていることに気づいた。


「ご、ごめんね。おかしいな、どうしちゃったんだろ急に」


慌てて涙を拭う。
触れた指は離れずに、なのははゆったりと首を振った。


「また来ても……いいんですか?」



短い言葉に頷くと、嬉しそうな笑みが返された。
それがとても嬉しくて、私も泣くのを忘れて笑った。











「なんやそれ、泣き落としやん」
「そ、そんなのじゃないよ!」


呆れたようなはやての言葉に俯く。

ニヤニヤ笑いから逃れたかったはずなのに。
丸い液体の中に映りこんだのはまるで少女のように頬を染めた自分の顔で、ますます恥かしくなってしまった。

もう半年前のことだというのに、思い出せば未だに恥ずかしい。
帰ろうとしていたなのはを引きとめて、それが無意識で。しかも泣いてしまうなんて。
大体、どうして涙が溢れてしまったのか自分でも分らないというのに。

まるで小さな子どもみたいだ。


うー、と唸りながら熱い頬に手を当てると、
隣に座っていたなのはが可笑しそうに肩を揺らした。


「えへへ。あの時のフェイトちゃん、可愛かったなー」
「もう……なのはまで」


5歳も年の離れた子に可愛いといわれ、嬉しいやら情けないやらだ。
それでもなんだか悪い気がしないのだから、困った。

こうやってはやてと組んで茶化されたところで、怒る気も全く起きない。
それどころか、なのはの笑顔を見れることが嬉しくて。


そんな私をスルーして。


「なるほどー。そんな経緯でなのはちゃんは通い妻しとるんやねぇ」
「か、通い妻って、そんなんじゃないってば!」


はやての言葉に、今度はなのはが頬を染めた。
慌てたようにぶんぶんと両手を振っている。


「いやいやー、隠さんでええって。お陰で私もおこぼれに預かれるんやし」


なのはが持ってきてくれた手作りサンドイッチを頬張りながら、ご満悦のはやては1人でうんうんと頷いている。
何だかよくわからないけど幸せそうだ。


(そうなんだよね)


否定したなのはの言うとおり、なのははあまり自宅には来なかった。
本人曰く、あまりお邪魔したら申し訳ないとのことだ。

来るのは決まって水曜日、早く帰宅ができるその日だけだ。
それもお店を手伝うという名目で、閉店をばたばたと終えた後はそんなに話もせずに寝てしまう。
なのはのお陰でサイドメニューが増え、お客さんにも好評で嬉しくはあるのだけれど。

やっぱり私は、もうちょっとお話してみたいなと思うわけで。


「私は毎日来てくれたっていいんだけどね?」



笑い混じりに告げると、なぜか辺りが沈黙した。
なのはに至っては、真っ赤な顔のまま固まってしまっている。


(な、何か変なこと言っちゃったのかな?)



「どうしたの、二人とも?」
「いや、なんちゅーか」


なのはとはやては二人して目配せしていて、私だけ退け者みたいだ。
理由を分らない私に、ますます眉を顰めたはやてが、


「な? こーゆーのを天然ってゆーんよ?」
「はやてちゃん……今まで苦労してたんだね」


吐くように告げた言葉に、なのはは慰めるようにはやての頭を撫でた。
調子に乗ったはやては、ありがとーなんていいながら、ちゃっかりなのはに抱きついている。
他所からみたらただのじゃれ合いなんだけど。

なんか……面白くない。


「だって、ホントのことだよ?」
「あー、はいはい」


私の言葉も虚しく響き、気づけばお店を空ける時間になっていた。
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