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【優しい煉獄 ~最終話~】


これにて長編パラレルSS【優しい煉獄】は終幕となります。
ここまで読んで下さり、本当にありがとうございました。

フェイト視点になります。


大丈夫!という方のみ続きからどうぞ!




私が初めて愛したのは、なのはだった。


どうしても、どうしても彼女に触れたかった。
気が狂う程に、もう――いてもたっても、いられなくて。

伸ばしたこの手が彼女に触れることが出来るのなら、私は。
――何度そう思っただろう。何度諦めただろう。

何かを我慢するごとに、自分の中で何かが砕け落ちていくのを感じた。

傷ついて傷つけて。
けれどそれはしょうがない事なんだと、勝手に自分で諦めていた。

ガラガラと大きな音を立て崩れているセカイの中で、逃げて、縋って、吼えたてて。
そうして完全に崩れ落ちる前。たどり着いた果てで。
私は「自分の本当」を知った。

だから、もう終わり。


確かに私は、弱かった。

けれど彼女と一緒なら、例えどんなことがあろうとも生きていける。
彼女が笑っていてくれるのなら。それだけで私も笑って生きていける。

彼女が居てくれれば、私は。
誰よりも、何よりも強くなれるから。


一心不乱に求めていた「彼女を幸せにすること」は、彼女自身に任せよう。
だって、彼女が幸せだと感じることは、私がどう足掻いたって結局は彼女にしか出来ない。

そんな、今更すぎること達が。
長い長い時間をかけて。


ようやく、わかった。


***【~最終話~】***


もうすぐだ。そう考えると、少しだけ身体が震える。
なのはもそれは同じなのか、繋いだ手のひらからお互いの緊張がはっきりと読み取れた。
一人じゃないことを安心させるように。単により強い力で手のひらを握り返す。
……いや、単に自分が安心したかっただけなのかも知れない。
その証拠に、同じようになのはから与えられた力に胸の奥がほんの少し軽くなった。
はぁ、と小さくため息を吐くと、なのはが面白そうに笑った。

「……緊張してる?」
「……当たり前だよ……」

困ったように眉を顰めると、なのはの手のひらが頬に触れた。
ひんやりとした肌に、なのはの温かな体温が染みこんでくる様で。
そっと瞼を閉じる。

私も、かな。と。小さく聴こえたその声。
瞼を閉じたまま、手のひらをなのはの頬へと寄せた。

両手でそっと包み込むようにする。
手の甲が、さらりとしたなのはの髪の毛に擽られた。

「大丈夫だよ、なのは」


大丈夫だから。そう、何度も繰り返す。


一言目の「大丈夫」には、私も傍にいるから、と。
二言目の「大丈夫」には、ずっと一緒だから、と。
三言目の「大丈夫」には――、


「……きっと、大丈夫だよ。フェイトちゃん」


どうしようもないほどの、願いを。



「……うん」


閉じていた瞼を開く。

眼前に広がる、綺麗な深い蒼。
ゆっくりと細められたそれに、同じように笑みを向ける。


手を繋いだまま、足を踏み出す。
一歩一歩、真っ直ぐに。

すると、程なくして閑静な住宅街に入った。
こつこつとアスファルトを叩く二人分の足音が、静かに響く。

そして、家が――見えた。
もうすっかり落ちてしまった陽の中、窓から細く漏れ出た光が
室内に人がいることを教えている。

ドキドキと、心臓の音がうるさい。

怖かった。でも、怖がっていては何も変わらない。
――変えられないし、伝わらない。

玄関先のボタンに指をかける。ひんやりと冷たい感触。
触れていた指に少しずつ力を加えていくと、そっとボタンが沈み込むのが伝わってきて。

ピンポーン。


甲高い音が、響いた。


そして、


「……ああ、お前達か」

懐かしい、低い声が聞こえた。
細く開いたドアから除く顔は逆行で薄暗く、はっきりとした表情までは伺えない。

「……こんな夜分に、ごめんなさい」

丁寧な言葉遣いで、なのはが口を開いた。


「何か……言うことがあるんじゃないのか?」

大きく開かれたドアからは、母さんの姿も伺い知ることが出来た。


「……行って来ます。お父さん、お母さん」


その言葉に、父さんは大きくため息を吐く。
眉を少しだけ下げた後。ああ、と。小さな返事が、聞こえた。







「いってらっしゃい」


いつもと変わらない、優しい母さんの声と。笑顔。

思わず鼻先がつんとした。
涙を我慢しようと拳を硬く握り締めるけれど、それも叶わなくて。
滲んだ景色の先、ぱたぱたと音を立てて大きな雫が零れ落ちるのが見えた。

止めようとしてもなかなか止まらなくて。
無理に袖口で拭う。暫らくするとはっきりしてきた視界の端に、なのはの顔が映りこんで。

うん、と頷き合って。


真っ直ぐに、前を向いた。



  ◇



これが、ずいぶん昔に体験した今も続く、私の。
――たった一つの大切な、大切な恋の話。


傷ついたことも傷つけたことも沢山あった。
それでも君は、今でもこうして私の傍に居てくれた。


あの日からもう、今年で片手では数え切れない位の年数が経つ。
相変わらず、いつも楽しそうに笑っていた。

もうシングルのベッドではなくなったというのに、あの時と同じように
私たちは身を寄せ合って眠りにつく。

一日の終わり、思い出す話は楽しいものばかりではなかったけれど。
それでも、楽しい話の方が、ずっとずっと多かった。


「フェイトママ、なのはママが呼んでるよ?」
「わぁ、ごめんごめん!」

ぼう、と考え事をしていると袖口をひっぱられた。
出合った頃より幾分大人っぽくなった、けれどまだ幼さが残るオッドアイが覗く。

慌てて返事をすると、車のキーを持ってジャケットを羽織った。

「ほら、ヴィヴィオもちゃんとコート、着ようね?」
「……これでいーい?」
「うん。よく出来ました!」

いい子だ、と頭を撫でると、嬉しそうに目が細められた。
その表情に、いつかのこの子を思い出す。そう言えば、あの時もこんな顔をしていた。

ヴィヴィオとであったのは、とある保護施設だった。

形の崩れてしまいお店には並べられないようなケーキなんかを、ボランティアとして
近くの児童館や保育所、または保護施設に配っていた私達は、その取り行き先の一つ。
とある保護施設で、初めてヴィヴィオに出会った。

人見知りらしい彼女は、初めはあまり懐いてはくれなかったけれど、
配達を重ねてる度に、だんだんと笑顔を見せてくれるようになった。
時間になると窓際で、車が来ないか確認するために道路を見ているという施設長の話には
思わず嬉しくて頬が緩んだのを覚えている。

特になのはには凄く懐いていて、二人の休みが重なった日には、遊びに行ったりしていた。
けれど、帰る度に悲しそうにするその子の表情が見たくなくて。

『……あのね、フェイトちゃん。相談があるんだけど……』


あの子の為に。自分には、なにか出来るのではないか。
そう提案したなのはの考えに、私はすぐに首を縦に振った。

そうして。
去年の春、私たちに家族が増えた。

当然のように広い部屋が必要になった私達は、長い間住んでいた部屋を引き上げ、
交通の便の良い駅の近くのマンションへと移り住んだ。

力強く引かれた矢のように真っ直ぐに早く時は過ぎ、
――そして、今日は――。

2人が車に乗り込んだのを確認して、ゆっくりと走らせる。
10分ほど経ったところで、他と比べると際立って真新しいお店が見えてきた。


新しくオープンする、私たちのお店だ。


今度は私だけじゃなく。なのはと二人だけじゃなく。

私と、なのはと、そしてヴィヴィオと。
家族3人で、また新たなるスタートに立つ。


「それじゃ、フェイトちゃん。お店、開けよっか!」

シャッターに手を掛けたなのはの真似をして、ヴィヴィオも隣でしゃがみこんでいた。
彼女にとっても、楽しみで仕方ないということが伝わってくる。


「うん。開けようか!なのは、ヴィヴィオ」


――手を伸ばして得た私の新しい世界は、想像していた暗い物では全くなくて。


「「「せーのっ!」」」




豪快に開かれたシャッター音と。
隣に立つ愛おしい人と、大切な娘の笑顔によって始まりを迎えた。





~END~

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Author:汐薙
初めまして、汐薙と申します。
魔法少女リリカルなのはで活動中。

主な取り扱いカップリングは
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