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【優しい煉獄 ~4話~】


甘い話じゃなくてごめんなさい;
久しぶりの中編です。

※ちょっとだけ痛い表現があるので注意してください



一度溢れた想いは止められず、ぽたり、ぽたりと流れ落ちて。
掬われる<救われる>ことのないそれは、ただ私の足元に溜まりを作る。

その上を歩く度に、大きく波紋を打つ。先に進む度に、小さく小さく音を放つ。

ぴちゃん、ぴちゃんと。

――ただ、言いようのない不安と苦しさに苛まわれて。
足がもつれて転ぶ度に。その溜まりに零れた涙が加わった。


もう歩きたくない。進みたくない。

必死にあがいて手を伸ばす。求めるものは何もない。真っ暗だ。
伸ばした手を硬く握り締めて、また水溜りに叩きつけた。

ぴちゃん、と跳ねる音。
大きく飛沫を上げ、まるでその罪を見せ付けるように私の顔を濡らす。

「……なのは」

このまま溺れてしまえればいいのに。

溺れて、溺れて。他のこと、何も考えられなくなっちゃうくらい。
ただ君だけを想って。……一人のセカイなら、誰も傷つけずに、済むのに。


「……っ、なの、は」


そんなのは、無理だ。
なのはがいないセカイなんて、堪えられない。

――知りたく、なかった。


君を愛した私が生きるには、この世界は地獄だということを。



***【~4話~】***


あれから……大分、日が過ぎていた。昨日卒業式も終わり、今日から晴れて春休み。
家に居る時も、私はなるべくなのはと顔を合わせないように、彼女を避け続けていた。

「……フェイトちゃん? フェイトちゃんってば!」
「――なに?」

朝食を食べてからは、ぼんやりとソファーに背を預けながらテレビを眺めていた。
もっとも情報なんて何一つ入ってなど来ない。ただ流れ行く色と音に身を浸しているだけ。
そうしていると、なのはらしくない少し大きな声で呼びかけられた。

ゆっくりと視線をそちらへと向ける。

困ったようなその表情は少しの不安を帯び、綺麗な蒼い瞳が
揺ら揺らと光を反射して揺らめいている。

ぷう、と膨れた頬と。……少しだけ尖らせた艶やかな唇。

「――っ、」

ふと先日のことを思い出してしまい、それから逃げるように視線を窓の外へ向ける。
乾いて白くなったコンクリートの塀の上に、桜色の花びらがあった。

花びらは風に撫でられ、ひらひらと浮き上がっては地へと落ちて行く。

その隣、隣接した家に視線を向ける。
庭には、まだ早い時期なのに、もう満開の桜の木。

――温暖化現象、と世間で騒がれているそれのせいなのだろうか。
普段なら、綺麗だな、と感傷に浸れるものなのに今日はそんな気分にもなれない。

なのはの瞳から逃げるただの口実でしかなかった。

「明日の準備で、今日はお父さんたちお店に泊まるんだって」
「――そっか。」
「寂しくなるね?」

「そうだね」

なのはの言葉に淡々と答えていくと、後ろにあったなのはの気配が消えた。
ややあって隣のソファーが沈み込む感触。

ぎし、と軽いスプリング音と共に、にゃはは、と照れたような声が聞こえた。

「えへへ。フェイトちゃん、やっぱりいい匂いするね?」

同じシャンプー使ってるのに、なんでなのかな?と。なのはが髪を一房手に取った
いつもなら軋む心を押さえつけて、なのはもいい匂い、するよ?なんて微笑んで。
髪を撫でてあげるなりしていた。でも今日はなにもしない。

――できるはず、なかった。
もう、とっくに――私には、その資格なんてなくなっていた。


「――やめて、なのは。」

少しだけ腰を持ち上げ、隣に座ったなのはとの距離を開ける。
鼻腔をくすぐる甘いなのはの匂い。

全身の血液が沸騰するような熱と、また――想いが溢れていく。


ナノハに、フレタイ。

口付けをしてしまったあの日から、溢れでた想いは止まらなくて。
――もっと、もっとと、小さな子どものようにただ、ねだる。


だめだ。わかってるから。
お願い、お願いだから。


「いま、私、汗かいちゃってるから……」

痛む喉から掠れる声をやっとのことで絞り出す。
そんな私の声に、なのはは眉を引き下げた。

「……フェイトちゃん、なんだか最近冷たい……。私、何かしちゃったのかな?」
「――、そんなこと、ないよ」

寂しそうななのはの声。

「――なのはは悪くないんだ」


そう。悪いのは私だから。
――君が想ってくれている好きとは、違う好きを抱えてしまった私の方。

軋む。痛い。壊れそうだ。

「なのはは何も悪くない。ごめんね?」

なるべく笑顔を作って、なのはの頭をなでようと手を伸ばす。
ぎちり、と関節が小さく悲鳴をあげた。止めろと。

――わかってる。触れてしまえば痛いことくらい、わかってる。
だけど、なのはのこんな悲しそうな顔、みたくないんだ。

柔らかな髪に触れる。
ゆっくりと梳くと、指の間から亜麻色の髪が光を放って零れた。
先ほどよりもふんわりと鼻腔をくすぐる匂い。

「……なのはだって、」


そうやって、自分を騙す。

笑顔を向けると、やはりなのはは不安そうに眉を引き下げたままで。
指先を動かすと小さなおでこに触れた。

先日ぶつけたところはもうすっかり腫れも引き、見えるのは真っ白い肌。
そっと撫でると、くすぐったそうになのはが目を細めた。

「……腫れ、引いてよかったね」

思い浮かぶ。――なのはに向けられた、あの表情と。
耐え切れずに犯した、心を抉った己の罪の傷痕が。

「あの時は迷惑掛けちゃって、本当にごめんね。フェイトちゃん」
「……あんなの迷惑だなんて思ってないよ」

「ありがとう、フェイトちゃん!はやてちゃんにも後で謝りの電話しなきゃだよね」

少しだけ頬を染め、なのはが笑う。
瞬間。視界が真っ黒になった。

「うん、いいんじゃ、ない……かな?」


――ねぇ、どうしてそんな嬉しそうな顔してるの?


何に対して、


「う~……同じクラスになってからはやてちゃんには迷惑掛けっぱなしだよ……」
「……ちゃんと、はやてにもお礼、言わなきゃだめだよ?なの、は」


誰に対して、


「えへへ。はやてちゃん、優しいんだよ~。この前もね?」


――痛いよ。なのは。


こんなにも、好きなのに。
君だけが、好きなのに。


「……フェイトちゃん??」

黙り込んでしまった私の顔を覗き込むように、なのはが動く。
柔らかい手のひらで、ソファーの生地を硬く握りこんでいた手を包み込まれて。


何かが、崩れた。


「――っ、きゃっ!」

なのはの肩に手をかけ、そのままぐっと力を込めてソファーへと押しつける。
空を舞った亜麻色に一瞬視界を遮られ、次に見えたのは蒼。

「……フェイトちゃん、どうしたの?」

私を信じきった瞳。
こんな状態になっても寸分の恐怖も窺えないのは、

私が、家族だから。


その信頼が、なおも立場を突きつけられているようで。
――どうしようもなく。……痛かった。

「……なのは」

肩を押さえ込んで唇を寄せると、やっと事の重大さを理解したのか
なのはは私の肩を押し、身を捩って逃げ出そうとしていた。
それをさせないように、なのはの身体に覆いかぶさって。

更に深く唇を合わせる。

酸素が足りずにくらくらして。それでもずっと口付けて。

「――やっ!ふぇ……っ、とちゃ……、」

なのはの体温を感じながら。――ぽろぽろと、涙が零れた。
零れたそれがなのはの頬を伝い、ソファーに濃い染みを残していく。

嬉しいのか、悔しいのか、罪悪感なのか、達成感なのか。
――もう、なにも分からなかった。

互いを繋ぐ糸を舐めとり、そのまま細い首筋に唇を滑らせる。
大きく跳ね上がるなのはの身体。逃がさないように、押さえ込んで。

「ふぇ、と、……やめて!やだよぉっ!」
「……っ、く、うぁ……っ、ふ…っ」


ただ泣きながら。


「ごめんなさい、なのは。……ごめんなさい」


うわごとのように――何度も、何度も。
決して届くことのない謝罪を繰り返しながら。

誰にも触れられたことのないそこに、赤い痕を刻み込んだ。


「――すきなんだ、なのは」



ふと、なのはの手が私の背中に回された。
引き剥がそうとしているのだろうか?


――今の私には、分からなかった。
------------------
【~5話~】へ。
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ぬはぁあああ(/Д/)な、何この切なさ全開&フェイトそん限界マックスな
急展開最高!!!ぶしゅうう(鼻血噴き出てます)すんごい好きなんですけど!
切ない…!もうフェイトさん貴女はどうしてこういう役割りが似合うんでしょう///
思いつめた感&切なさがもうね、たまりませんよ~(>▽<)ノ素晴らしい♪
何度読み返してもいいですねーうんホント素晴らしいですよ!大好きです!!
続きも凄くドキドキしちゃいますし末永くお待ちしておりますね~GJ☆GJ☆

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>炎樹さん

あああ!ありがとうございます!!そう言って頂けると嬉しい限りですww
というかもう、もったいないお言葉すぎですよ!(*ノノ)
うん……もう、フェイトさんはなんでこんなに似合うんでしょうか。
書いてると申し訳なくなるのですが、でも凄く書きやすいという。うん。
本当にありがとうございます!続きもガシガシ頑張ります!!



>杏香さん

ありがとうございますw さぁ、これからなのはさんはどう動くのか、ですよね!
2人には(特にフェイトさんには)まだまだ頑張ってもらいたいと思いますっ!
お言葉、本当にありがとうございますw 凄く嬉しかったですw
はいw 続きも頑張りますーーーー!!



>魔ーぴょんさん

Subjectでの出だしを見て一瞬、「あれ?これはもしや違う系のサイトでは」とか
思ってしまった汐薙です。本当に申し訳ありませんww 
気づけばそんな言葉が似合うSSをがっつり書いてます(ぉ
お言葉嬉しいですw ありがとうございますーーー!って、ちょ!

>汐薙さんが書くと切ない系も切なくないと言う不思議www

な ん と い う マ ジ ッ ク !! そんなww まさにカモフラージュ!!
……書いてる人がこんなんだからですね。お気持ちが痛いほど分かります(ぉ

うんうん。なのはさんみたいな妹がいたら絶対に惚れますよね!
汐薙教ってww それなんて嫌な宗教団体なんですかww
……多分入教してくださった方が片っ端からエロk(ry
いやもう、そんな魔ーぴょんさんが大好きです(笑

ありがとうございます!続きも頑張ります!!
WEB拍手
感想やリクエストなど頂けたら嬉しいですw  返信不要の方は頭に×をお願いします
プロフィール

汐薙

Author:汐薙
初めまして、汐薙と申します。
魔法少女リリカルなのはで活動中。

主な取り扱いカップリングは
フェイト×なのは
はやて×なのは です。

リンクフリーですので、貼るも剥がすもご自由にどうぞw
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