長編第23話。フェイト視点。
※ちょっと閲覧注意です。ごめんなさい!16話が一番痛いとか嘘でした!(土下座
……多数の方が思っていただろう展開。
ごめんなさい。でもこうしないと話が進まないんです(つ□T)
あれです。次回の話が投下されてから一緒に読んだ方がいいかも知れない。
――あ、これで終わりじゃないですよ? ……念のため…
どうしたんだろう、何も感じられなくなってしまった。
痛いはずなのに。苦しいはずなのに。
何も、感じなかった。
ああ、
――ただ、理解できなかった。
ねぇ、 なのは。
君の声を、聞かせて。
-----【dreiundzwanzig 〜(Ende)〜】-------
静かだった。まるで、何もなかったかのように。
ただ――静かだった。
崩れた天井からは、未だぱらぱらと小さな瓦礫が舞い落ちて。
埃を吸い込んだ喉は、ちりちりと痛んだ。
「――かあさん」
進むことも出来ず、ただ呟く。
――その声に、帰ってくる声は、ない。
天井部だったそれは、今は床に這いつくばり、視界の先を塞いでいた。
煌びやかだった装飾も砕け、大きなシャンデリアは辺りにガラス片を撒き散らして。
そこがどんなに大きく立派な部屋だったかは、今はどれも語ることは出来ず。
――戦禍に巻き込まれた、街並みの一部のそれと重なっていく。
「――、」
目の前の現実から逃げるように反らした視線の先。
土で汚れた足元に、小さな青い光を放つ石が見えた。
拾い上げると予想外に重く、ずっしりとしていて。
ひんやりとした感触が、指先に染みこんでいく。
零れそうになった涙を我慢するように、ぐっと硬く目を閉じて。
石を右手に握り締めたそのままに。崩れ落ちた瓦礫の先に、一礼をした。
ごめんなさい、と。ありがとう、と。
そして。――大好きですの気持ちを込めて。
ほんの数年だったけれど。私が望んだ愛はもらえなかったけれど。
――それでもあなたは、わたしの大好きな、母さんでした。
「フェイトちゃん」
どれ位経ったのだろうか、背中越しに控えめな声がした。
溢れた涙を無理やり袖口で拭う。きっと今は――見せられるような顔、してない。
振り向かない私。それでもなのはは無理に向かせようとも、回り込もうともせず。
「……フェイトちゃん」
ぎゅっと、肩が抱かれる。背中が、温かい温度に包まれた。
回されたその腕を、ぎゅっと握り締める。
傷ついて、傷つけて。
「――終わったよ、なのは」
それでも、君は、いつでも傍に居てくれた。
「――帰ろう、なのは」
「うん」
その言葉に腕を解いた君の瞳は、やはりどうしようもないほどに優しくて。
「――君を、絶対幸せにするよ。なのは」
その笑顔を、絶やしたくないと思った。
もし許されるなら、これからも私は君だけを愛そう。
この魂が朽ちるまで、君だけを想おう。
身分なんて関係ない。騎士ではなく、恋人として。
ずっとずっと傍に居て、笑いあって。
絶対に、君を幸せにするんだ。
もう――泣かせたりなんて、絶対にしない。
「フェイトちゃんも幸せにならなきゃ、だめだよ?」
「私は――君と居られれば、それで何も望むこと無いくらい幸せだよ」
この命を救ってくれた母さんに、恥じないよう。
精一杯幸せに、生きていくんだ。
そうでなければ――きっと、報われない。
手を取り合って、城内を出る。陽はもう傾き、辺りは茜色に染まりだしていた。
数歩進むと、こちらへと翔けてくる数人の魔力光が見えた。
「なのはちゃん! フェイトちゃん! 無事か!」
「はやて!」
「はやてちゃん!」
はやてと、何人かの隊員。そして守護騎士の皆の姿。
彼女達たちの防護服はところどころが破けもしていたが、それでも大きな傷も見当たらない。
クロノ達はと尋ねると、今は事後処理をしている所で、皆も大した怪我はないという。
その言葉に安堵のため息を吐いた。
「――終わったんか?」
その言葉に、頷く。
「でも……石は壊せなかった」
「――さっきの魔力波、やっぱりそれやったんやろ? なら無理して衝撃与えんほうがええ。
吐き出されたんがあれで全部とは限らんからな。――私らがヘタにいじって、
またでっかい暴発起こしてもうたら、それこそ話にもならんしな」
その言葉になのはが頷いた。
あの暴発でもヒビも入らなかった程頑丈なようだから。
きっと、私達の魔法でも全ては壊せないかもしれないね、と。
「――お城に持ち帰って然るべき処置で壊してもらったほうがいいのかも知れないね」
「その前にまた保管庫に戻されるかも知れへんけどな」
とにかく一度持ち帰ろう、と。
話がまとまり、持っていた石を一時的に封印しようとデバイスを掲げた、その時だった。
「――!?」
嫌な、感じがした。
――まさか。だって、あの時っ!!
「フェイトちゃん!!」
「――っ、なっ!!」
傍にいた隊員の一人が、閃光に包まれる。
間近にその光を捉えてしまい、目の前が真っ白になった。
なんとか状況を把握しなければと開いた視線の先には、
およそ人のそれではないような鋭い眼光。乱れた艶やかな長い髪。
こちらに伸ばされたそれとは逆の腕からは、幾本ものコードが覗き、端を黒く焦がしていた。
「――っ、!」
「待っていたわ…プレシアの終焉を!そしてこの時を、ずっと!――ずっと!」
あの時、墜としたはずなのに、と。
そう考えて、思考の端が行き当たってしまった。
そう。冷静になれなかった私は、確認しなかったのだ。
あろうことか。本当に、その起動を停止させたのかを。
停止させたんだと、思い込んでしまっていた。
「あんたの母親が奪ったのよ! 私の全てをっ!!
それでも私には――あいつに敵う事も出来ない。それがどれ程悔しかったことか!」
「フェイトちゃんっ!!」
だめだ。早く盾を――っ!
慌てて陣を展開させようとする。だが、その刃は寸前に迫っていた。
切っ先が、視界に大きく映りこむ。
もう、間に合わない。
訪れるであろう痛みを耐えるように、堅く目を瞑った。
「――……?」
しかし、その痛みはいつまで経ってもやって来ない。
ただ、頬にぬるり、とした熱を感じて。
「なのはちゃん!!!!」
はやての、悲痛な声と。
「にゃはは……間に、合った」
目の前に広がった、優しい、蒼と。
「……え……?」
あか
「あはははははははははははははははは!」
あか、あか。――深い、あか。
目の前が、赤く爆ぜた。
私を庇うように私の身体の前に躍り出された、その身体。
細い刃が、覗いて。――綺麗な白を。一瞬で赤に染め上げた。
「…ぇ……え?――な、に……」
分からない。何が、どうなっているの?
私の足元に崩れ落ちるように倒れこんだなのは。
手の力が抜け、握り締めていた石が地面へと転がり落ちて。
それを拾った彼女は、そのまま赤に染まったなのはの背中に手を押し当てた。
その衝撃に、なのはの顔が苦痛に歪んだ。吐き出される呼気が、熱い。
暫くして、どくん、と。何かを飲み込むような小さな脈動音が響きだした。
「なのは……? なの、は……、なのは!」
「これでドクターに、妹達にまた会えるのね――さぁ! 皆を呼び戻して!!」
高笑いが聞こえて。
けれど、その高笑いはすぐに止んだ。
「なぜ発動しないの!? どうしてっ!!」
混乱し、戸惑いの声が上がる。
一瞬動きの止まった隙を突いて、
「ああああああああああああああああああああああああああっ!!」
ぐったりと伏したままのなのはを抱き締めたまま。剣を握り締めて。
怒りに任せ、そのまま持てる力でそれを横薙ぎに振り込んだ。
「ぐ、」
食い込んだ感触。鈍い声。
それを機に、彼女はもうなにも言葉を告げなくなった。
「なのは……!なのはっ」
すぐにシャマル先生が陣を展開する。
身体が淡い光に包み込まれたにも関わらず、依然として赤は止まらなくて。
「……にゃは、は……ちょっと、失敗」
申し訳なさそうに、なのはは笑った。
流れ出る体温が、抱き締めている腕を伝り、私の防護服の袖を濡らす。
何とかそれを止める様に傷口を押さえつける。止まらない。止められない。
どうして! なんで!!
「――ごめ、なさい……シャマル、せん、せ……あれほど、ちゅうい、されてたのに」
「なのはちゃん、しゃべらないで! 大丈夫だから! 絶対に治してあげるからっ!!」
はやてと守護騎士達がそれに魔力を貸すように陣を展開する。
私も少しでも力になれる様に大きく陣を展開させた。
私の魔力、全部使っていいから!
もう魔法なんて二度と使えなくなってもいいからっ!
「いやだよ……なのは…」
声が、出ない。
熱の塊が、喉につかえて。呼吸が、出来ない。
困ったように笑ったなのは。
震える手がこちらへと伸ばされて、それを自分の手で包み込んだ。
――なのはの手じゃないんだと思いたくなるくらいに、冷たい。
だけど、そのてのひらの感触は、確かになのはのもので。
どうしてこうなった?
私があの時、行こうといわなければ。
あの時すぐに帰っていれば、こんなことにはならなかった?
「なのは」
傷口が、塞がらない。止まらない。
「私をおいていかないで……なのは…」
「……ふぇ……と、ちゃ…、泣いちゃ、だ……め」
震える手に、頬を包み込まれる。
私の頬に散った赤を拭うように動かされたそれは、力はなくて。
今にも、消えてしまいそうで。
認めたくなくて。思わず地面に転がっていた石を握りこんだ。
「本当になんでも願いを叶えてくれるなら! お願いっ!なのはを……なのはを…っ!」
変わらず、しん、と静まり返ったままの石。
――ぼろぼろと、涙が溢れた。
「お願いします……なのはを、助けて……っ」
「――っ、発動させるんには、確か他になんかしないとあかんかったんや!」
「はやて!なんとか思い出せねぇのかよ!こいつ、早くしねぇと死んじまうっ!」
「そんなんわかっとるよ! ――っ、起動させるにはLosung(パスワード)を……っ」
「――っ、」
零れた涙が、なのはの頬を伝って流れ落ちていく。
私の頬に寄せられたその手が、どんどん冷えて、白んで。
「も――い、から。ふぇ、と……ちゃん」
「壊すだなんて…、言った、から? だからこんな……っ」
お願いだから、どうか。
「なかな、ぃ……で? わら…って?」
心配をかけさせないように。
なのはは笑った。いつものように。何も無かったかのように。
「……大好きだよ、フェイトちゃん」
しっかりとした、言葉だった。優しい、声だった。
にっこりと笑ったなのはは、ゆっくりと目を閉じて。
「っ、なのはちゃんの――心機能が、……停止、したわ」
それが、最後だった。
シャマル先生の声が聞こえた。
はやての、皆の泣き声が聞こえた。
「なの……は?」
もう、その笑顔を向けてくれることも。
「――っ、ぅあ……あ、ああ……っ」
もう。
「なのは……なのはっ、なのは」
縋るようにぺたぺたと、てのひらを寄せる。
なのはの頬に、幾重もの彼岸花が咲き乱れていく。
「なの、は」
その唇に、自分の唇を寄せた。
柔らかくて、冷たくて。――しょっぱさに混じって、鉄の味がした。
「君を――幸せにするって、言ったのに」
抱き締めた腕は、抱き返してくれなかった。
――どれくらいそうしていたのだろう?
はやての声がして。私は、そちらを向かず、その言葉に首を横に振った。
「私は――なのはの傍に居る」
「なのはちゃん、フェイトちゃんにそんなこと……望んでないんちゃうかな?」
「わかってるよ。――それでも」
私の幸せは、
――それだけが。
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【Das Resultat sagt alles 〜vierundzwanzig〜】へ
- 2008/04/29(火) 00:48:16|
- 長編パラレルSS:『騎士姫』<完>
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| コメント:5
>アクエリアスさん
うう……寝る前なのにこんな寝つきが悪くなるSSですみませんでした;
フェイトさんは――うん。そうですね…… orz
残りあと少し。幸せを信じている、とおっしゃってくださるそのご期待を
裏切らないように、頑張り、ま、す(つ□T)すみません;
>漆風さん
も……申し訳ないです orz
でもこうしないと――今後の話が、つ、続かなくてっ!(落ち着いて下さい
ありがとうございます!続きも頑張ります!!
>水無月さん
ああああ!……す、すみません(つ□T)
フェイトさんには本当に申し訳ない限りな話でした…。
ちょっとフェイトさんからザンバー喰らってきます;(逝ってこい
最終話まで残り少し。
頑張りたいと思います!ありがとうございます!
> まーぴょん さん
ええ……なのはさん…こうなってしまいました orz
最初から決めていたとはいえ、書いているときは心中……フェイトさんに申し訳なくて。
本当に2人には壁が多かったですね……(ドS性を出した汐薙のせいなのですが(土下座))
ううう…ありがとうございます;すみません;
続きも頑張りますので宜しくお願い致します;;
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- 2008/05/01(木) 01:57:44 |
- 汐薙 #-
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